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レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。
高句麗語合戦 〜あれは韓国これは日本〜

1 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/14(土) 16:41 ID:jWJqQfL6

 とざいと〜ざい。これより皆々様にご披露致しまするは、いにしえの高句麗語の
数々で御座りまする。高句麗は今を去ること1300年以上昔に滅びし古代国家で
御座りまするが、かつては満州西部・沿海州から朝鮮半島北部一帯にかけて
広大な領地を持ち、彼の隋・唐帝国の攻撃すら再三にわたって撃退したことも
あるほどの強いつよ〜い国家に御座りますれば、ニダビトの皆様にとりましては
数少ない「誇らしいですね。サ、サ、サ。」と言える存在なわけで御座りまする。

 ところが、あに計らんや、資料に残る高句麗の言葉をよくよく調べてみますると、
ウリマルには似ても似つかず(それは言い過ぎ)、それどころか、何とな〜んと、
彼のにっくきチョパーリどもの言葉とよく似ているというからさあ大変! 果たして
ニダビトの皆さんは誇りある歴史を取り戻すことが出来るでありましょうか。
      __      /
      iii■    < 乞うご期待!
   ─ー(´∀`)-─   \
   |\@|_Y_|@/|
 .<\__(ωω)__/>

24 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 14:59 ID:zl8b8dc.

No.13
意  味 :泉(名詞)
原  文 :「泉井郡一ニ云フ於乙買」「泉井口県一ニ云フ於乙買串」
      「蓋蘇文或イハ云フ/2蓋金ト/1。姓ハ泉氏」(『三国史記』)
      「大臣伊梨柯須彌弑ス/2大王ヲ/1」(『日本書紀』)
      ※伊梨柯須彌=泉蓋蘇文
漢 字 音:於乙(中:io-iet、朝:∂-щl)
      伊梨(中:ii-lii)
再 構 音:er〜∂l(李)
      uil<*bul(村)
比較(日):古代日本語「wi(井)」(村)
比較(韓):新羅語「っ¨r(井)」(李)
       ←新羅始祖降誕地を「蘿井」「奈乙」と記す(『三国史記』『三国遺事』)
      後期中世語「u-mщl(井戸水)」(娜)
比較(他):トルコ語「bul-a-q(泉)」「bul-a-γ」(泉)
      キリヤーク語「eri〜erri(川)」
      オロチ語「uri(水・川)」
考  説 :
 「井戸」は言わば人工の泉であるから、意味的にも問題はあるまい。日韓とも
よく一致するが、とりわけ新羅語は高句麗語と語形が近い。なお、『日本書紀』の
「伊梨柯須彌」は、高句麗語の再構に関して「乙」のような舌内入声の漢字の
末子音tをr(l)で再構すべきことの根拠の一つとされている。

25 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 15:00 ID:zl8b8dc.

No.14
意  味 :穴(名詞)
原  文 :「孔巌県本高句麗ノ済次巴衣県」(『三国史記』)
漢 字 音:済次(中:tsei-ts‘ii、朝:cye-c‘∧)
再 構 音:cec(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :特になし。

26 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 15:01 ID:zl8b8dc.

No.15
意  味 :辺(名詞)
原  文 :「[之+守]城郡一ニ云フ加阿忽」(『三国史記』)
漢 字 音:加阿(中:ka-a、朝:ka-a)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「k∧s(辺)」(李)
比較(他):ゴルディ語「kera(辺)」
考  説 :
 朝鮮語とよく対応する例。「[之+守]」は「邊」の半島系異体字か。

27 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 15:12 ID:zl8b8dc.

 ありゃ。見直してみると、自分で>>2のような基準を定めていながら、ところどころ
そのルールを守っていない箇所がありますね(汗)。以下の通り修正致します。

>>16 [山見]→[山+見]

>>18 [β是]→[β+是]

>>19 [シ婁]→[シ+婁]

>>23 [冫食]→[冫+食]

28 名前:名無しさんはポシンタン:2003/06/15(日) 15:17 ID:JSbqOJT.

いつの間にかこんなスレが建ってたのね<・∀・>イイヨイイヨー!!
陰ながら応援しています
ガンガレ

29 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 15:21 ID:zl8b8dc.

 >>22の「内米忽」の解釈は我ながら中々うまくいったと思っております。
つーか、今まで本当に誰もこういう指摘をしていないのか、そちらの方が
むしろ気になるくらいです。村山七郎はともかく、李基文は考え直して
同様の結論に達してそうですけどね。

30 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 16:12 ID:zl8b8dc.

>>28

 応援ありがとう御座います。どうあがいても人気スレにはなれそうにもない
ですが、資料スレとしてぼちぼちやって行こうと思っております。ちなみに、
スレタイは近松の名作浄瑠璃「国性爺合戦」から取りました。この作品、
角書(つのがき。名題の先頭に付けられた小字二行の部分)に「父は唐土
母は日本」とありますので、それをもじって「〜あれは韓国これは日本〜」と
したわけです。最初は「宇宙大作戦」をもじって「高句麗語大作戦」として、

  高句麗ーそれは総督府に残された最後の開拓地である。そこには
  住民の想像を絶する新しい発見、新しいデムパが待ち受けているに
  違いない。これは、総督府最初の試みとして半万年の調査飛行に
  飛び立った宇宙船U.S.O.ケンチャナヨ号の驚異に満ちた物語である。

な〜んてやるつもりだったのですが、タイトルが今イチ気に入らない上、
口上のために作ったAAが思いっきり和風だったのでこりゃ合わんわと
思い、放棄したのでした。実際「高句麗語大作戦」では「スパイ大作戦」を
思い浮かべる人の方が多そうですしねぇ(^^;。

31 名前:日語商売:2003/06/15(日) 17:08 ID:UsgVsbwQ

ソンセンニム、本日も乙です。

>>19
こちらで(=娜々志娑无さんスレ)で何回か紹介しようとしてしそびれていた本ですが、
宋敏『韓国語と日本語のあいだ』(菅野裕臣他訳、草風館、1999)所載論文
「高句麗語の語末母音消失について」では、kolは中期朝鮮語のk∧β∧l(村、郡;
現代韓国語koщl(郡);日本語「こほり」とも関係が深いか)や、日本語のkura(蔵)と
関係があるとしています。

>>22の例は確かに「波」と対応を考えるのは無理がありそうですね。
むしろ私は「内米忽」という語形の中に「忽(kol)」が含まれているのが気になりました。
こちらは「城」の訓としてしばしば現れますが、前述の宋氏は上掲論文の中で、
この「城」を「山上に建てられた城塞」さらに「山谷」に該当すると述べています。
中世〜現代の韓国語でもkolは「谷」の意味です。
すると、「内米忽」の「米忽」は、「水+谷」の合成語で「池沼」をあらわす語ではないでしょうか?
「池城」は「内米忽」を「内米+忽」と異分析したための表記かもしれません。

32 名前:日語商売:2003/06/15(日) 17:46 ID:UsgVsbwQ

>>31
ちょっと補足。「米忽」<「水+谷」は宋氏の考えではなく(彼は「波」説)、私の妄想です。
本来ならば「米」「忽」を含む合成語(とみられる地名)をもっとよく調べるべきですし、
満州語やツングース語に現れる「namu〜lamu(海)」との関係が弱くなるのを
克服しなければいけませんね。。。
なお朝鮮語kolと日本語kuraの関係については既に金沢庄三郎や大野晋によって
指摘されています。宋氏はそれを更に高句麗語までさかのぼって関係づけようとしているわけです。

33 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 18:28 ID:zl8b8dc.

>>31 日語商売さん

 その本は私も持っています。付録に高句麗語語彙一覧でも付いているかと
期待して購入したのですが、何とも使いづらい日韓比較語彙一覧が付いている
だけだったのでかなりガカーリした覚えがあります(w。本の方はざっとしか見て
いなかったので、その記述は見落としていました。ご指摘ありがとう御座います。

 高句麗語「kol」が城ではなく谷の意かも知れないというのは面白いですね。
確かに古代日本語には山や谷関係の語に「クラ」という語が複合した例があり
ます。「クラタニ」「クラオカミ」「クラヤマツミ」「クラミツハ」といった語です。本居
宣長以来、この「クラ」を「谷」の意であるとする説が広く行なわれていますが、
『時代別国語大辞典・上代編』は、「クラ」を「谷」の意とする根拠は明瞭ではない
とし、「座」の意の「クラ」と取るべきではないかと述べています。「クラ(座)」の
本義は一段高く設けられた場所であり、神の宿る座を「イハクラ(磐座)」という
ことからもわかるように、かつて岩を神の宿る場所と見なしていたということは
いかにもありそうなことだと思います。それに、方言に残る「クラ」の意味はみな
「崖」とか「岩」であって「谷」ではありませんしね。

 また、アクセントから見ても、『日本書紀』巻一・弘安本訓に「クラオカミ」を
「上上平上平」と加点した例がありますので、この「クラ」が高起式(単独では
高高型なのか高低型なのかは不明)であったことがわかりますが、「クラ(座)」
と同源であることが明らかな「クラ(鞍)」が院政期に高低型のアクセントである
ことから、金田一法則に照らして、両者が同源である可能性は高いと言えます。
ちなみに、「クラ(蔵)」も「クラ(座)」と同源とされることが多いようですが、こちら
は院政期に低低型ですから、アクセント的には同源と見なし難いということに
なります。

 そんだこんだで、私としては『時代別』の指摘通り、日本語の「クラ」は「座」の
意の「クラ」が意義分化を起こして「崖」とか「岩」という意味に転じたものであって
「谷」という意味は存在しないと考えます。ただ、世の中には岩に囲まれた谷も
当然あるわけですから、岩場の多い土地では「クラ」に「谷」という意味が派生する
余地もないとは言えません。たまたま日本語ではそういう派生は生じなかったが、
高句麗語や朝鮮語では生じたというなら、日本語の「クラ」を朝鮮語の「kol」と
結び付けることにあえて反対はしませんが、どうなんでしょうね。

34 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 18:35 ID:zl8b8dc.

 ところで日語商売さんは

http://www.nijl.ac.jp/" target=new>http://www.nijl.ac.jp/
国文学研究資料館

のデータベースにある「日本古典文学」をご存じですか。利用するためには
登録が必要ですが、無料で岩波の日本古典文学大系を電子テキストとして
利用することが出来ます。私もよく使うものは全文選択→コピペ→エディタ
に貼り付けて保存という風にしてテキストデータを落として使っていますが、
中々便利ですよ。

35 名前:日語商売:2003/06/15(日) 19:37 ID:UsgVsbwQ

>>33
あ、お持ちでしたか。
これの語彙比較索引、諸学者の説がまとめられていて、発想のネタにはまぁ使えるのですが、
初期の思いつきであげたような、非常に危ない例が混じっていて玉石混淆なので、根拠にはしにくいですね。
ちょっと不用意でした。
ちなみに今年の春の学会で宋氏とお目にかかる機会があったのですが、あいにくその日は学科の合宿で、
お話を聞くことが出来ませんでした。ちょっと残念でした。

クラのアクセントからの検証、これは見落としてました。
クラオカミのクラですが、私はこれを「暗い」のクラだと思っていたのですが。
「暗し」の院政期アクセントは高高降なので、クラオカミのクラの部分とアクセントも一致しますし、
タカオカミと対になって現れるあたり、「クラ」を「座」と取ってしまっては、あまり対になる印象が
弱いような気がするのですが。。。

ま、ちょっと話が横道にそれましたが、おっしゃる通りどうも上代日本語に「谷」の意味の
「クラ」という言葉があった証拠は、弱いようですね。
でももう少しふんばって反論してみます。
クラオカミという語の場合、これは神名という点で固有名詞です。
古事記の神名につけられたアクセントを見ると、たとえば「豊雲野神」の「雲」には高調をあらわす
「上」という注記がつけられています。これは「雲」という言葉が一般名詞では「低低」調であるのに対し、
ここでは「高高」調で発音されたことを示しています。同様に古事記で「上」が付けられた神名の部分を
調べると、一般語としては低調なものが、固有名詞(神名)の構成要素として使われる場合のみ、
高調に発音されたようなのです。
これは現代語でも「岡」「島」「谷」のような2音節の姓が、一般名詞としてのアクセント(低高)ではなく
高低形に発音されるという法則(例外も多いのですが)として存在します。
とすれば、クラオカミの「クラ」のアクセントも、固有名詞化により「高高」に転じた可能性が
あるのではないでしょうか。(以上、小松英雄『日本語の世界7 日本語の音韻』1981中央公論社より)

ほかにも、古事記に現れる「天之闇戸神(あめのくらとがみ)」、「国之闇戸神(くにのくらとがみ)」の
「クラ」は、「谷間」をあらわしているようですし、地名にも「鎌倉」のように、
谷間をあらわしていそうな「クラ」が現れるので(この辺『日本国語大辞典』第2版から)、
「座」とは別個に、谷をあらわす「クラ」という言葉があった可能性も指摘できるのでは・・・。
ただそれが「蔵」や「暗し」とどう結びつくかはまた別の問題ですが。

36 名前:日語商売:2003/06/15(日) 19:47 ID:UsgVsbwQ

>>34
これは存じませんでした。ご教示ありがとうございます。
早速登録申請してみました。
これまでは資料のそろっている同僚の部屋に行って借りてきては参照するを繰り返していましたが、
こういう便利なものがあったとは。。。!

37 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 21:31 ID:zl8b8dc.

>>35 日語商売さん
>クラオカミのクラですが、私はこれを「暗い」のクラだと思っていたのですが。

 確かに記紀ともに「クラオカミ」「クラヤマツミ」「クラミツハ」の「クラ」に対しては
「闇」という漢字を宛てていますので、当時の人がこれらの「クラ」を「暗い」と
認識していた可能性はあるだろうと思います。おっしゃる通りアクセントも一致し
ますしね。ただ、後世そう誤解されることはあっても、命名時に「暗いオカミ」だの
「暗いヤマツミ」だのという名を付けたりはしないのではないでしょうか。日本の
神名の場合、大抵「トヨ(豊)」「オホ(大)」「ハヤ(速)」「タケ(武)」のような美称
が選ばれますが、「クラ(暗)」が美称になるとはとても思えません(w。まぁこれ
は現代人の感覚ですから、古代人はまた別なのかも知れませんがね。

 それから、固有名詞化に伴うアクセントの個別変化の可能性ですが、それは
十分あり得ることだと思います。金田一法則は極めて信頼性の高い法則です
が、それでも時折それに反する例があります。多くは個別的な変化と見なされ
るのですが、その中で比較的多いのが意義分化に伴う変化です。意義分化に
より新しい語が生まれても、元の語と同音同アクセントのままでは混乱が生じる
恐れがあるので、その混乱を避けるためにアクセントだけが変化したというわけ
です。日語商売さんが示された『古事記』の神名の例に代表される固有名詞化
に伴うアクセント変化もこれに準ずるものと捉えられるでしょう。あとはこの「クラ」
を低起式の「クラ」(たとえば「蔵」)ときっちり関係付けることが出来ればOKと
いうことになりますが、そこからが中々大変でしょうね。それに、これはあくまでも
例外的な処置ですので、出来ることならあまり取りたくない手段でもあるという
ことはご承知置き下さい。

>古事記に現れる「天之闇戸神(あめのくらとがみ)」、「国之闇戸神(くにのくらとがみ)」の
>「クラ」は、「谷間」をあらわしているようですし

 う〜ん、どうでしょう。『古事記』ではこの神々は山野にちなんで生まれた神として
挙げられていますが、私の見る限り、この「クラト」をわざわざ谷間の意として捉え
なくてはならないような理由は特にないように思えます。「ト(戸)」は入り口を意味
する語ですから、「クラ」が谷と解せるなら谷間とも取れますが、「ト(戸)」と同じト
甲類音の名詞には他に場所を意味する「ト(処)」という語もありますから、その場合
「クラト」は岩場という意味になりますので、こちらでもごく自然に解することが可能
です。鎌倉も谷の多い土地柄であることは承知していますが、その鎌倉では谷を
意味する語は「ヤツ」であって「クラ」ではないですし、地名も「オウギガヤツ(扇谷)」
のように「ヤツ」が使われています。そういう中であえて鎌倉の「クラ」を谷の意で
解することにどれだけの妥当性があるのか、正直疑問ですね。

38 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/15(日) 21:48 ID:zl8b8dc.

>>36 日語商売さん

 前に登録をした時は確か1週間程度で登録完了のメールが来たように
記憶しています。IDだけでなくパスワードも要求されるのがちょい面倒
ですが、一度行って必要なものだけ落としてしまえば後はそう用がない
と思いますので、この程度のことは我慢してあげて下さいね(w。

39 名前:日語商売:2003/06/15(日) 23:43 ID:R2pRHGSI

>>35でちょっと訂正。
「とすれば、」以下は私の思いつきであり、小松氏の説ではありません。
誤解を招くような書き方ですので、一応ここで注記しておきます。

>>37 娜々志娑无先生
>「クラ(暗)」が美称になるとはとても思えません

これについては同意見ですが、美称でなく実質的特徴を示す部分、暗いところに潜む蛇身の神の
意味だととらえれば、まぁ神名の構成要素としてはあってもおかしくないかと思います。
ま、これは「クラ=谷」説とは関係ないので、これ以上は深追いしません。

>それから、固有名詞化に伴うアクセントの個別変化の可能性ですが、それは
>十分あり得ることだと思います。
>(中略)
>あとはこの「クラ」
>を低起式の「クラ」(たとえば「蔵」)ときっちり関係付けることが出来ればOKと
>いうことになりますが、そこからが中々大変でしょうね。それに、これはあくまでも
>例外的な処置ですので、出来ることならあまり取りたくない手段でもあるという
>ことはご承知置き下さい。

ええ、なにしろ「豊雲野神」のような文献的証拠がある例と違って、「クラオカミ=谷+オカミ」説は
あくまでもそれらからの類推なので、他に証拠が見つけにくいです。
それに『古事記』では「クラオカミ」は、それ単独で名前が出てくるわけで、
先に挙げた対の名と考えられる「タカオカミ」は、日本書紀の一書に出てくる神ですから、
簡単に対であるとはいえないんですよね。むしろ「クラオカミ」が元にあって、
それを「暗+オカミ」あるいは「谷+オカミ」と解釈した結果、
対する神の名として考えられた後出の神名である可能性が高いでしょう。
その場合、「クラ=谷」の方が、「岳」をイメージさせる「高」との対として考えやすい、
ってぐらいしか、「クラ=谷」説の利点がないんですよねぇ。。。

>う〜ん、どうでしょう。『古事記』ではこの神々は山野にちなんで生まれた神として
>挙げられていますが、私の見る限り、この「クラト」をわざわざ谷間の意として捉え
>なくてはならないような理由は特にないように思えます。(以下略)

確かに簡単に「クラト=谷の入り口」とはとらえられませんね。岩場とも解せるし、
もっと直感的に「暗いところ」の意味かもしれませんし。
ではこの「闇戸神」はどういう神なのか、と調べるためにググってみましたが、
ほとんどは『古事記』の当該箇所で、祝詞に出てくる例や祭神として祀られている例が
見当たりませんでした。地名の「クラ」に言及したものもあったので読んでみたら、
いやはや、「座」も「暗」も「蔵」も同語源で、はては「股ぐら」「胸ぐら」「あぐら」「枕」まで、
すべて「V字の形をしたもの」という意味から派生したというすごい説を目にして、
早々に立ち去ってきました。

うむむぅ。。。相当「クラ=谷」の優位を語るのは難しいですな。
古代の神名に出てくるものは「座」「暗」で解釈できますしね。
地名も「クラ」がつくところの多くは崖の近くだそうです。
まぁそういう崖が多く見られる地点には当然谷も含まれるでしょうから、
「クラ=谷」説はこの辺に活路を見出すしか生き延びる余地がないかもしれません・・・。

ちなみに「やつ」「やと」「や」はどうも東日本特有の地形語であるらしく、
西日本にはほとんど分布しないそうで。同じことは「さわ」にも言えるようで、
地名を調べていくと、谷間のような地形を指す地名の分布は、いわゆるフォッサマグナの辺りで、
きれいに「○○谷」と「○○沢」に別れるそうです。脱線なのでこれはこの辺で。

40 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/16(月) 22:20 ID:QxNXDrEQ

No.16
意  味 :霜(名詞)
原  文 :「霜陰県本高句麗ノ薩寒県」(『三国史記』)
漢 字 音:薩寒(中:sat-斤an、朝:sal-han)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「simo(霜)」(娜)
比較(韓):後期中世語「s∂ri(霜)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 従来は朝鮮語しか対応例が挙がっていなかったが、日本語「simo(霜)」も
第一音節の頭子音は一致しているのだから、一応候補としての資格はある
だろう。それに、高句麗地名「薩寒」が対応しているのは「霜陰」なのであるから、
「薩」は「霜」、「寒」は「陰」に対応していると見るべきではないか。そうであれば、
第二音節は日本語「kage2(影)」と関連付けることも可能になってくるが、次項
との関係もあり微妙。

 ところで、「霜陰」の漢字音が「中:si¨aη-i∂m、朝:saη-щm」であって、
「薩寒(sat-斤an)」と似ているのは少々気になる。或いは再音訳という可能性
もあるのではなかろうか。

41 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/16(月) 22:23 ID:QxNXDrEQ

No.17
意  味 :影(名詞)
原  文 :「陰竹県本高句麗ノ奴音竹県」「冬音奈県一ニ云フ休陰」(『三国史記』)
漢 字 音:奴音(中:no-i∂m、朝:no-щm)・奈(中:na、朝:nε)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):新羅語「∧i〜щi(属格)」(娜)
                ←「矣(朝:щi)」「衣(朝:щi)」
      後期中世語「∧i〜щi(属格)」(娜)
比較(他):ナシ
考  説 :
 「陰竹=奴音竹」から「陰=奴音」を導き出すのはたやすいが、もう一方の例
「休陰=冬音奈」は難しい。一応「休=冬音」「陰=奈」と取れることは取れるが、
どちらも間に「音」が挟まれているのは非常に気になるところである。高句麗語
では資料によって冠を意味する語が「骨蘇」とも「蘇骨」とも書かれている(No.49)
ので、或いはこれもその類かも知れないが、「音」を連体格の助詞と取る手もある
のではないかと思う。もしそうなら、新羅語・後期中世語の属格「∧i〜щi」と対比
させることも可能になってこよう。No.80「休」参照。

42 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/16(月) 22:28 ID:QxNXDrEQ

 続いて動植物語彙に参りま〜す。

No.18
意  味 :木(名詞)
原  文 :「高木根県一ニ云フ達乙斬」「赤木県一ニ云フ沙非斤乙」等(『三国史記』)
漢 字 音:乙(中:iet、朝:щl)
再 構 音:?(李)
      i¨l〜i¨(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):トルコ語「i¨(森)」「i¨γac(木)」
考  説 :
 日韓ともに対応例なし。次項との関係は不明。或いはトルコ語同様、森と木の
関係か。

43 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/16(月) 22:30 ID:QxNXDrEQ

No.19
意  味 :木(名詞)
原  文 :「?」(『三国史記』)
漢 字 音:盻(中:斤ei、朝:hye)
再 構 音:?(李)
      kyei(村)
比較(日):古代日本語「ki2(木)」(村)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 原文が不明。誰か補ってちょ。前項との関係は不明であるが、日本語と
よく対応する例である。なお、「槐壌郡本高句麗ノ仍斤内郡」の「仍斤」は
「槐(えんじゅ)」に相当するものと見られるが、実際に「槐」を意味する部分
は「仍」の部分であって「斤」は「木」を意味する部分であると推定すること
も可能である。「斤」の漢字音は「中:ki∂n、朝:kщn」であるが、直後に
「内(中:nu∂i、朝:n∧i)」が続くから、当然語末の「n」は同化されるので、
再構語形から除いてもよかろう。即ち、「木」の再構語形として「ki∂」が
得られるということになり、これはまさに本例と一致する。No.78「槐」参照。

44 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/16(月) 22:34 ID:QxNXDrEQ

No.20
意  味 :穀物(名詞)
原  文 :「穀壌郡本高句麗ノ仍伐奴県」(『三国史記』)
漢 字 音:仍伐(中:ni∂η-biu∧t、朝:iη-p∂l)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「ina-Φo(稲穂)」「mi2(実)」(娜)
比較(韓):後期中世語「py∂(稲)」(娜)
      現代朝鮮語「nui(白米中に混じた稗)」(娜)
比較(他):ナシ
考  説 :
 本例の対応語彙は知られていないが、日本語「ina-Φo(稲穂)」あたりは
候補としてどうだろうか。日本語「iΦa-Φo(巌)」と高句麗語「pahyoi(巌)」
について対応する可能性が指摘されていることから、高句麗語では語頭の
i母音が脱落する傾向があると言えないこともない。「ina-Φo」は「*inapo」
に遡り得るから、〔*inapo→*napo〕という変化を辿ったと考えれば、一応
その可能性もありそうだが…。後半部分(「伐」)だけなら、日本語「ミ(実)」も、
唇音交替(m/b交替)を想定すれば「ビ」に変わり得るから、一応は候補たり
得るだろう。朝鮮語については、「nui(稗)」と「py∂(稲)」の複合語のような
ものを想定すれば、何とか対応させられそうだが、さすがにこれは厳しいか。

45 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/17(火) 21:02 ID:wtTRqTJw

>>43

 補説です。古代日本語の語形は「ki2(木)」としてありますが、実は「ke2」という
語形も存します。ただしそれは九州及び東国の方言の、それも複合語の用例しか
ありません。以下用例を示しておきます。

・是(これ)御木(みけ){木、此をば開(け)と云ふ。}の川上に居(はべ)り。
                               (景行紀12年。場所は豊前)
・秋七月の辛卯の朔甲午に、筑紫後国の御木(みけ)に到りて、高田行宮(たかた
のかりみや)に居(ま)します。             (景行紀18年。場所は筑後)
・真木柱(まけはしら)ほめて造れる殿のごといませ母刀自面変はりせず
                         (万・巻20・4342。駿河※の防人の歌)
・松の木(け)の並みたる見れば家人の我れを見送ると立たりしもころ
                          (万・巻20・4375。下野の防人の歌)

※『時代別国語大辞典・上代編』には「上総」とあるが「駿河」の誤り。

 「古語は方言に残る」「古語は複合語に残る」の両経験則を適用すれば、日本語
「キ(木)」の古形は「ケ(木)」ということになりそうです。そうなればますます高句麗
語の語形と似てきますね。

 そう言えば、日本語の「ホトケ(仏)」の語源は、従来仏陀の音訳である「浮屠」
「浮図」と日本語「ケ(木)」の複合語であると説かれることが多いようですが、仏教
が日本に伝来した経緯を考慮すれば、むしろ「ホトケ」の「ケ」は夫餘系百済語の
「斤ei(またはki∂)」であると見るべきではないかという気がします。

46 名前:日語商売:2003/06/17(火) 23:38 ID:TtLCZHE.

>>43,45
万葉仮名や朝鮮漢字音の通例では、「盻」を含む中古漢字音 -ei 韻(斉韻)は、
e1(エ甲類)や -iei で出てくるので、ki2〜ke2 を示す「木」とはちょっとずれているように見えます。
ところが、万葉仮名に現れる -ei 韻のうちでも、比較的古い時代から用いられている
「閉」「米」は、それぞれ fe2, me2 をあらわすのに用いられています。
これについて私は卒論で考察したことがあるのですが、中古漢字音の方で、
-ei > -iei という変化が(6〜7世紀頃?)起こったことを反映しているようです。
「盻」という表記がいつの時代までさかのぼれるかわかりませんが、もしこれが
高句麗時代の、それも相当古い頃から使われていた表記ならば、その反映していた音は、
中期〜現代の斤y∂i(hye)や村山氏再構形kyeiよりも、keiに近い音だったと考えられ、
日本語「木」の上代語形とよりよく一致します。

ということで、高句麗語の「木」をあらわす語としては、
keiであったと考えた方がいいのでは、と思います。

47 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/17(火) 23:48 ID:wtTRqTJw

>>46 日語商売さん

 おお、何と心強いフォロー。誠にかたじけなし。ただ、最大の問題は原文が
不明ということなんですよね。村山七郎の論文にまさか嘘はないでしょうが、
♪この字何の字、気になる気になる♪

48 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 02:20 ID:RPBwhcx.

No.21
意  味 :根(名詞)
原  文 :「楊根県一ニ云フ去斯斬」「高木根県一ニ云フ達乙斬」(『三国史記』)
漢 字 音:斬(中:ts∧m、朝:c‘am)
再 構 音:c‘am(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):キリヤーク語「t∫amγ(根株)」
考  説 :特になし

49 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 02:21 ID:RPBwhcx.

No.22
意  味 :松(名詞)
原  文 :「松[山+見]県本高句麗ノ夫斯波衣県」「松岳郡本高句麗ノ扶蘇岬」等
      (『三国史記』)
漢 字 音:夫斯(中:piu-sie、朝:pu-s∧)
      扶蘇(中:piu-so、朝:pu-so)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「pos(樺)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 本例を朝鮮語側の対応例として挙げるのは納得が行かない。松は常緑針葉樹、
樺は落葉広葉樹。いくら何でも樹種が違い過ぎると思う。

50 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 02:21 ID:RPBwhcx.

No.23
意  味 :柳(名詞)
原  文 :「楊根県一ニ云フ去斯斬」(『三国史記』)
漢 字 音:去斯(中:k‘io-sie、朝:k∂-s∧)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 次項との関係は不明。

51 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 02:22 ID:RPBwhcx.

No.24
意  味 :柳(名詞)
原  文 :「楊口郡一ニ云フ要隠忽次」(『三国史記』)
漢 字 音:要隠(中:iεu-i∂n、朝:yo-щn)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「yanagi2(柳)」(李)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 前項との関係は不明。日本語「ヤナギ(柳)」は「ヤナ」と「キ(木)」に分析出来る
から、先部成素の「ヤナ」と対応するものと思われる。

52 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 02:24 ID:RPBwhcx.

No.25
意  味 :蒜(名詞)
原  文 :「蒜山県本高句麗ノ買尸達郡」(『三国史記』)
漢 字 音:買尸(中:mai-t∫ii、朝:m∧i-si)
再 構 音:mair(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「mi1ra(韮)」(李)
比較(韓):後期中世語「man∧l(蒜)」(李)
比較(他):中世蒙古語「maηgirsun(野蒜)」
考  説 :
 「尸」は新羅語資料では常に「r」音を表記するのに用いられている(音読字
らしいが、なぜそう読むべきか、その理由はまだわかっていない)ので、再構
語形も「-r」語尾付きのものとなっている。それはいいのだが、「買」の字が
使われているにも関わらず、李が再構語形を「mair」としたのは不審。No.10
「水」にもあるように、「買」字は「mi-」系の音で再構すべきである。よって、
再構語形としては「mier」乃至「mir」が適当であると思う。李が「mair」と再構
したのは後期中世語やモンゴル語の語形に引かれたためだろうが、こういう
ところはきちんと統一すべきだろう。

53 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 13:49 ID:FEM6qxrU

>>46 日語商売さん

 >>43で、「槐壌郡本高句麗ノ仍斤内郡」から木の意の高句麗語として「ki∂」を
再構したことについてはどう思われますか? 日本語の場合、「ヤナギ(柳)」
「スギ(杉)」「サカキ(榊)」「カキ(柿)」「ハギ(萩)」「マキ(槙)」「ヒヒラキ(柊)」
「クヌギ(櫟)」「ウツギ(空木)」などのように、「キ(木)」を後部成素に持つ樹木名
が少なくありません。尤も、日本語の「キ(木)」はどうも樹木のみにとどまらず、
植物一般を指す語だったようですが。「ヲギ(荻)」「ナギ(水葱)」「ネギ(葱)」
「フフキ(蕗)」(「ムギ(麦)」はキ甲類だから別語源みたい)、また「クキ(茎)」
などを見ると、そうとしか考えられないように思います。アクセントが異なるので
あまり強くは主張出来ないのですが、「ケ(毛)」とも同語源だとすると、自然に
生えてくるもの一般を指す語だったのかも知れません。もしそうであれば、
『日本書紀』に見える、素戔嗚尊の抜いた毛が各種の木になったという神話は、
単に発音が同じことに基づく連想というだけではなく、古代人の実際の語源意識
を反映したものということになりますが、さてさて。

54 名前:日語商売:2003/06/18(水) 19:00 ID:LjXUYk6E

>>53
中古中国語の口蓋性半母音には2種類があって、それぞれ口蓋性の強いiと、
口蓋性が弱くてщに近い発音だったと考えられるIだったと考えられています。
「斤」の前に現れるiは、この後者のIで、これは日本呉音や朝鮮漢字音では反映されない
ことが多いです(例:「近」中古音kI∂n、呉音コン、朝鮮音kщn)。
それから類推して、「槐壌郡本高句麗ノ仍斤内郡」の「斤」から再構できる形は、
k∂(あるいはki¨)とする方がより適当だと思います。
これだと、>>43で示したkeiともっと似た形になるという利点があります。
また語尾にiを付けて名詞化するのは中期〜現代の朝鮮語にもみられる構成法なので、
k∂とkeiがちょうど上代日本語の「コ2」と「キ2」のように、合成語内に現れる形と
単独で見られる形という対応をするようにも思えます。
というのは、「仍斤内」という例は「槐+地」を合成した語であると考えられ、
これは木立、木の葉という語に残る「コ2」が現れる環境と少し似ているからです(合成語の前部要素)。
ただ「槐+地」という結合のあまり強くない語形で、そのような形が現れるものかどうか非常に疑問です。
またこの語の場合、後ろの「内(で表される語)」の影響で、語末がi>nの変化を
起こした可能性もあり、可能性としてはそちらの方が大きいかもしれません。

合成語の一部としての「斤」ですが、これは大いにあり得ると思います。
現代韓国語では樹木を指す場合、その植物を表す語のあとに「木」の意味の「namu」を付けるのが普通で、
たとえば「松」は「sol(松)+namu→sonamu」、「柳」は「pっtщl(柳)+namu→pっtщmamu」です
(前部要素末尾の l が n の前で脱落していることに注意)。
もちろん厳密には「仍」の部分だけで「槐」の意味を表す例とか、他の樹木名と見られる部分に
k∂やkeiに当たるものが現れるか検証する必要がありますが。

55 名前:日語商売:2003/06/18(水) 19:51 ID:LjXUYk6E

>>53 つづき
植物を指す語の後部要素に現れる「キ2」については、こちらとしては確言できませんけど、
どうなんでしょうかねぇ? ありそうでもあるし、なさそうでもあるし。
「日本国語大辞典」では、古くに植物一般を指した「キ2」の例として、古事記歌謡の例をあげていますが、
その例は「あたね(蓼藍?)搗き 染めキ2が汁に」「いくり(海石)に振れ立つなづ(浸)のキ2の」ですが
どちらも植物一般の例と考えるには弱い気がします。。。
「ねぎ」は古語では「き」なので、これが「木」と同語源ならばある意味都合いいのですが、
あいにく「木」は高調、「葱」は低調なので、語源が同じかどうか非常に怪しいですね。
ただ「毛」については、ハゲ地をあらわす「毛無」とか、作物の出来具合いをあらわす「毛」という
言葉があることから、あるいは非常に古くに「木」「草」「毛」などをあらわした「コ2〜カ」という語が
あった可能性もあると思います。まぁメタファーが働きあう概念同士で、しかも語形が似ていると、
そこに(当たっているかどうかはともかく)語源意識が自然に芽生えても不思議ではないのですが。

なお「麦」については、これの上古漢字音 mu∂k(私見ではmr(w)∂k)から来ているとの説もあるそうです。

56 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 21:49 ID:RPBwhcx.

>>55-56 日語商売さん

 レスありがとう御座います。樹木の命名に関して朝鮮語も似たような語構成を
取るということは、やはり「斤」が木を表わしている可能性は高そうですね。

>あいにく「木」は高調、「葱」は低調なので、語源が同じかどうか非常に怪しいですね。

 あれ、逆ではありませんか。私の手持ちの旧版『日国大』には、「木」は低平調、
「葱」は高平調か、とあります。まぁ「葱」については上代の仮名書き例がなく、
甲乙すら不明ですから、私もあまり自信を持っては言えないのですが、仮名書き
例があり、キ乙類であることが明らかな「ヲギ(荻)」と「ナギ(水葱)」あたりは発音
上は問題ありませんし、そもそも「クサ(草)」という語自体、「キ(木)」と関係があり
そうです。「キ(木)」には被覆形として「コ(木)」があることはご存じの通りですが、
その「コ」よりも更に古い語形として「ク」という語形があったようなのです。「クダモノ
(果実)」は「ク(木)+ダ(古い連体助詞「ナ」の音変化形)+モノ(物)」と分析出来
ます(「ケダモノ」参照)し、記紀には木の神として「ククノチ(木々の霊)」という神も
登場します。そんなわけで、「クサ(草)」もまたこの「ク」を造語成分として持つ語
である可能性はあるというわけです。それに、「クサ」のアクセントは低平調です
ので、アクセント的にも矛盾はしませんしね。まぁ現実問題として古代人が樹木と
草を厳密に区別していたかとなると、かなり怪しいわけですが。その辺は私だって
怪しいもんですしね(藁)。

 「ケ(毛)」については、ケ乙類であるのはいいのですが、アクセントが高平調と
いうのがネックですね。ただ、「ケ(毛)」を先部成素として含む複合語の中では、
なぜか「ケモノ(獣)」という語だけが低平調でありアクセントが「ケ(毛)」と一致し
ないというのは興味深い事実だと思います。何となればこのことは、もしかすると
「ケ(毛)」が本来は低起式の語であったことを示しているのかも知れないからです。
そういう意味では、「ケ(毛)」と関係の深い語である「カミ(髪)」が低平調というのも
実に示唆的ですよね。

 そうそう。樹木名に「キ(木)」を含む名詞ですが、「ツバキ(椿)」なんていかにも
それっぽいのに、そのキが甲類音というのは不思議ですね。「ムギ(麦)」が違う
ということは既に触れましたが、「ススキ(薄)」のキも甲類だったりします。もし
これらの上代特殊仮名遣が不明だったら、みんな一緒くたにしてしまって何の
疑いも持たなかったことでしょう。いやぁ、意味だけから語源を考えるのって本当に
危険なものですね。桑原桑原。

57 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 21:50 ID:RPBwhcx.

>>56

 上のリンク間違い。>>54-55でした。スマソ。

58 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/18(水) 22:55 ID:RPBwhcx.

>>53 日語商売さん

 上の漢字音表記では面倒くさかったのとIとlとが紛らわしいのとで、
介音のiとIは区別しませんでしたが、やっぱり区別した方がよかった
かしら。Iの代わりにιを使っていた時期もあったんですがね。

59 名前:日語商売:2003/06/19(木) 01:04 ID:2WPAUioc

>>58
一番簡単なのはiをjiで、Iをiで表記するのだと思います。
この区別、呉音や万葉仮名、朝鮮漢字音への反映を考える時非常に重要なので、表記しておくべきだと。

60 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 01:35 ID:oPvG8Uec

>>59 日語商売さん
>一番簡単なのはiをjiで、Iをiで表記するのだと思います。

 なるほど。きちんと区別した方がいいわけですか。さすがにこの辺になると、
門外漢にはチト厳しいものが…。ともあれ、手を抜いたのは失敗だったという
わけですな(´・ω・`)ショボ〜ン。ところで、「比」は『学研漢和大字典』では中古音
[pii]と記されていますが、これなどはどういう扱いになるのでしょうか。「ji」と
記すのは最初の「i」だけで、主母音は「i」のままで行けばいいのでしょうかね。

61 名前:日語商売:2003/06/19(木) 03:27 ID:2WPAUioc

>>60
藤堂氏の音価で -ii となっているのは、あれは介音(半母音)と主母音を区別して表記しているだけです。
実際には -i だけであまり差し支えありません。ただ介音の位置にuがあるときは -iui と表記します。
「比」の中古音は pjii と書いた方がよいかとも思いますが、pji でもいいと思います。
あと、表記がしにくいのもいくつかあったと思いますが、そういうのが出てきたときは、ご相談下さい。

62 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 11:49 ID:oPvG8Uec

No.26
意  味 :蕪(名詞)
原  文 :「菁山県本高句麗ノ加支達県」(『三国史記』)
漢 字 音:加支(中:ka-t∫ie、朝:ka-ci)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「kabu(蕪・頭)」(娜)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 日韓ともに対応語彙は指摘されていないようだが、「支」を「夫」の誤記乃至誤伝
であると考えると、漢字音としては「中:ka-piu、朝:ka-pu」となり、日本語「kabu
(蕪・頭)」と対応させることが可能になる。

63 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 11:53 ID:oPvG8Uec

No.27
意  味 :牛(名詞)
原  文 :「牛岑郡一ニ云フ牛嶺一ニ云フ首知衣」(『三国史記』)
漢 字 音:首(中:∫i∂u、朝:syu)
再 構 音:su¨(李)
      ∫u〜su(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「syo(牛)」(李・村)
比較(他):ナシ
考  説 :
 朝鮮語とよく一致する例。「知衣」は「波衣(No.06「巌」)参照」の誤記らしい。
日本語は強いて挙げれば「ウシ(牛)」だろうが、第一音節の母音の処理が
厄介である。

64 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 12:05 ID:oPvG8Uec

No.28
意  味 :兎(名詞)
原  文 :「兎山郡本高句麗ノ烏斯含達県」(『三国史記』)
漢 字 音:烏斯含(中:o-syie-斤∂m、朝:o-s∧-ham)
再 構 音:osaxam〜usaxam(李)
      wusigam(村)
比較(日):古代日本語「usagi1(兎)」(李・村)
比較(韓):ナシ
比較(他):キリヤーク語「osk(兎)」
      トルコ語「tawi¨sγan(兎)」
考  説 :
 日本語とよく一致する例とされるもの。古代日本語には「ヲサギ(兎)」という
語形もあるが、これは東国方言らしい。古語は方言に残ることが多いから、
「ヲサギ」が古形である可能性は十分あるが、そうだとすると、高句麗語の「o-」
と日本語の「wo-」との間で変化があったとしなければならない。No.53「10」で
日本語がwを残しながら高句麗語ではwを落としていること等を参考にすれば、
祖形は「wo-」とみてよいのではなかろうか。

65 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 12:10 ID:oPvG8Uec

No.29
意  味 :熊(名詞)
原  文 :「功木達一ニ云フ熊閃山」(『三国史記』)
漢 字 音:功木(中:kuη-muk、朝:koη-mok)
再 構 音:koη<*kum?(李)
      koηmok(村)
比較(日):古代日本語「kuma(熊)」(李・村)
比較(韓):後期中世語「kom(熊)」(李・村)
比較(他):ラムト語・エベンキ語「kuma(海豹)」
      エベンキ語「kumaka(牡鹿)」
考  説 :
 再構語形から見る限り、李は「功」だけが「熊」に対応すると見ているようだが、
別の箇所では「功木」が「熊」に対応するとしていて、混乱が見られる。仮に「功」
が「熊」に対応するとすると、「木」に対応するのは「閃」ということになる。『学研
漢和大字典』によれば、「閃」の原義は「さっと門に入る」であり、そこから「ちらちら
見え隠れする」、更に「一瞬きらりと光る」という意味に発展したようだ。思うに、
「熊閃山」とは熊が時々現れる山という意味なのだろう。当然「木」は「時々現れる」
という意味の動詞ということになるわけだ。問題は対応する動詞だが、朝鮮語の
ことはわからないからしばらく措くとして、日本語の動詞の中では「ミユ(見)」が
その候補として挙げられるかも知れない。もしそうであるとすると、「功木達」とは
「熊の見える山」という意味ということになり、「熊閃山」とほぼ意味が一致するよう
に思うが、いかがであろうか。なお、「熊」に相当する名詞は周辺の言語の語形
からしても語末が唇内鼻音「-m」であることが期待されるのに、本例では喉内鼻音
「-η」になっているのは気になるが、これはたまたま直後にmを頭子音に持つ語が
来るという環境にあったため、そのmに同化してしまったものだろう。高句麗語の
「熊」の再構語形としては「kum」乃至「kom」でよいと思われる。

66 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 12:22 ID:oPvG8Uec

No.30
意  味 :白鳥(名詞)
原  文 :「鵠浦県一云古衣浦」(『三国史記』)
漢 字 音:古衣(中:ko-i∂i、朝:ko-щi)
再 構 音:koi(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「kukuΦi1〜kuΦi1(鵠)」(李)
比較(韓):後期中世語「kohε(鵠)」(李)
比較(他):中世トルコ語「qoγu(鵠)」
考  説 :
 日韓高句麗語、よく一致する例である。李は古代日本語の「鵠」の語形を「kufu」
「kotu」としているが、明らかな誤りなので訂正しておいた。古代日本語の「鵠」には
「ククヒ」と「クヒ」の二つの語形が存するが、通常の語形は「ククヒ」の方である。
中古になると「コヒ」「コフ」という語形も見えるが、以上の四形の中で最古形と判断
されるのは「クヒ」だろう。「ククヒ」は「クヒ」の畳語「クヒクヒ」が重音脱落を起こして
生まれたものと思われる。高句麗語の「koi」は遡れば「*koΦi」乃至「*koβi」の
ような語形だったと想像されるので、日本語の古形とよく一致する。中期朝鮮語の
「kohε」は「*kokai」からの変化と考えられるが、更に遡れば「*kokaΦi」のような
語形だったのかも知れない。これも元を正せば「*kopi」の畳語「ko-kopi」から変化
したものだろう。ただ、これらの語形はそもそもが白鳥の鳴き声からの命名であると
解されるので、自然音の言語音描写は自ずから似てくるものであるから、ただの
偶然により三者の語形が一致した可能性があるということもまた確かである。

67 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 12:46 ID:oPvG8Uec

No.31
意  味 :猪(名詞)
原  文 :「?」(『三国史記』)
漢 字 音:烏斯(中:o-syie、朝:o-s∧)
再 構 音:?(李)
      wusi(村)
比較(日):古代日本語「usi(牛)」(村)
      古代日本語「wi(猪)」(娜)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 原文が不明。誰か補ってちょ。村山によれば日本語対応例ということになる
のだが、「猪」を「牛」と対比させるのは少々無理があるので、個人的には抵抗
あり。多少語形が遠くても「ヰ(猪)」を挙げるべきではないだろうか。No.28「兎」
やNo.53「10」のように、日本語では保存されているwが高句麗語では存在し
ないことが多いようだから、例えば祖形を「woXi」(Xは何らかの子音)のような
語形として、高句麗語では〔X→∫〕及びw脱落という変化が起きて「o∫i」となり、
日本語ではXが脱落し、更に母音融合乃至母音脱落により「wi」という語形に
なったと推定することも可能であるように思う。

68 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/19(木) 12:49 ID:oPvG8Uec

 以上で動植物語彙は終わり。次回は身体語彙の予定です。
まだまだ半分以上残っております。ふう。

69 名前:日語商売:2003/06/19(木) 17:11 ID:.3lA/1vg

>>49
漢語で「扶蘇」と言えば、樹木の枝葉が茂って広がっているさまを表す語ですが、
これを高句麗語の「松」の表記に使ってる辺り、ちょっと気になりますね。
意味も含めた表記をしてるようにも見えます。
ちなみに類似の語形で「扶桑」ってのもありますが、これは中国の東方海上の島にあるという
伝説の神木(そこから日本の美称になった)の名ですけど、
私見ではこれは「扶蘇」の語尾が鼻音に変化して出来た語だと思います。
もうここら辺からは妄想に近いのですが、高句麗で松は神木であったとすれば、その美称として
中国語由来の「扶蘇」が取り入れられ、定着したんじゃないかと思ったり。

70 名前:日語商売:2003/06/19(木) 17:40 ID:.3lA/1vg

>>65
中国語には -om, -um, -uam のような、主母音もしくは介音が円唇の母音とmは共起しないので、
高句麗語の側にそういう音節があっても、うまく表記することが出来ませんでした。
そのため「木」で語末のmを表記した可能性もあると思います。
ただ郷歌などで語尾のmを表記するのに用いられる字は通例「音」であり、mだけ表記するのに
わざわざ余計なものが付いている「木」を使いそうにもないです。
やはり何らかの後部要素、もしくは「閃」に当たる語があったのでしょう。
韓国語で「閃」に当たりそうな語を探したけどよくわかりませんでした。。。

それから事務連絡。
今度の日曜日に日本に一時帰国するため、しばらくの間は、
「大漢和」や「日国」とかを検索することが出来ません。
あまり大部でない資料類は日本に送ったので、全然話に参加できないという状態にならないと思いますが、
こちらから「なんかいい証拠とかない?」ってことになるかもしれません。。。

71 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 00:30 ID:.l0NMW9I

>日語商売さん
>>69

 「扶蘇」が高句麗で用いられた漢語かも知れないというのは面白い発想ですね。
日本にも独自の漢語が大量に存するわけですし、高句麗にもそういう独自の漢語
があったとしてもおかしくはないですな。ただ、それを立証するのは中々難しそう
ですが(^^;。

>>65
>中国語には -om, -um, -uam のような、主母音もしくは介音が円唇の母音とmは共起しないので、
>高句麗語の側にそういう音節があっても、うまく表記することが出来ませんでした。

 ふ〜む。そういう事情があったとは…。となると、>>41のNo.17「影」も、「音」は
単に「-m」だけを表現している可能性が高いわけですから、「音」の母音部分に
注目した私の「朝鮮語の連体助詞反映説」はあえなく轟沈ということになりますね。
まぁ高句麗語の連体助詞である可能性はまだあるわけですが、何にせよ、日本語
と関連付けることはちょっと難しそうです。

>今度の日曜日に日本に一時帰国するため、しばらくの間は、
>「大漢和」や「日国」とかを検索することが出来ません。

 資料については、日本語関係は私の手元にそこそこ揃っています(『日国大』は
旧版ですが)から、要請があればこちらの方で調べてうpしますのでご心配なく。
さすがに『大漢和』は職場に逝かないと調べられませんが。

72 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 16:10 ID:.JVZgiNA

No.32
意  味 :心(名詞)
原  文 :「心岳城本居尸城」(『三国史記』)
漢 字 音:居尸(中:kio-∫ii、朝:-si)
再 構 音:?(李)
      ko¨r(村)
比較(日):古代日本語「ko2ko2ro2(心)」(村)
      古代日本語「koro(自分自身)」(娜)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 「尸」は新羅語資料では「r」で読む字(→No.25「蒜」参照)。古代日本語「コロ
(自分自身)」は一字一音の仮名書き例がないため上代特殊仮名遣の甲乙は
不明だが、『万葉集』や『日本書紀』古訓、平安初期の訓点資料などに見える
から、上代にも存した可能性は高い。問題は、高句麗語と比較した際、語形的
には「コロ(自分自身)」が最も近いが、意味的には「ココロ(心)」の方が近いと
いうことである。「コロ(自分自身)」と「ココロ(心)」の関係は不明だが、高句麗
語「ko¨r(心)」を無視して考えれば、「ココロ(心)」は「コロ(自分自身)」の畳語
「コロコロ」が更に重音脱落を起こして生まれたものらしく思えるし、逆に「コロ
(自分自身)」を外して考えると、日本語の「ココロ(心)」はいかにも高句麗語語形
「ko¨r」の畳語「ko¨rko¨r」から変化したもののように見えるのである。どちらが
真実に近いのか現状では何とも判断がつかないが、とりあえず三者を互いに
関係あるものとするなら、共通祖語の段階で「ko¨r」には「心」「自分自身」という
意味があり、日本語では意義分化により「自分自身」の意味は「コロ」が、「心」と
いう意味はその畳語「ココロ」が担ったとでも解するしか方法はなさそうである。

73 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 16:11 ID:.JVZgiNA

No.33
意  味 :口(名詞)
原  文 :「[犬+章]項口県一ニ云フ古斯也忽次」「穴口県一ニ云フ甲比古次」
      (『三国史記』) ※[犬+章]の「犬」はけものへん
漢 字 音:忽次(中:hu∂t-ts‘yii、朝:hol-c‘∧)
      古次(中:ko-ts‘yii、朝:ko-c‘∧)
再 構 音:kolc〜koc(李)
      kuuts<*kutu(村)
比較(日):古代日本語「kutu〜kuti(口)」(李・村)
比較(韓):済州島方言「kulrε(口)」(李)
      全羅南道方言「kul(口)」(村)
比較(他):ナシ
考  説 :
 村山は朝鮮語の「kulrε(口)」を全羅南道方言とするが、済州島はかつて
全羅南道に属していたそうだから、実際は済州島方言のことを言っている可能
性が高い。本例は日本語とよく一致する例として有名。李によれば、「kolc」と
「koc」は高句麗語内部の方言的な差異と考えられるという。

74 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 16:38 ID:.JVZgiNA

No.34
意  味 :足(名詞)
原  文 :「?」(『三国史記』)
漢 字 音:廻(中:斤u∂i、朝:hoi)
再 構 音:?(李)
      kwai(村)
比較(日):古代日本語「kuw-(蹴)」(村)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 これも原文が不明。誰か補ってちょ。古代日本語の「蹴る」の意の動詞は「クヱ」
という連用形の例しかなく、ワ行下二段活用なのかワ行下一段活用なのか不明。
院政期には合拗音化して「kue〜kueru」というクヮ行下一段動詞となった後、更に
「ke〜keru」)と直音化してカ行下一段活用となり、江戸中期以降「keri〜keru」と
ラ行五段活用となって現代に至っている。村山は「足」を意味する名詞を動詞化した
ものが古代日本語「ケル(蹴)」であると考えているようである。名詞「テ(手)」と動詞
「トル(取)」の関係のようなものということらしい。古代日本語「コユ(越)」も、「越える」
という意味のほかに「蹴る」という意味も存したことが知られているから、対応例という
ならこれも一緒に加えてもよいかも知れない。ただしアクセントは「クヱ」が低起式、
「コユ」が高起式である。

75 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 16:42 ID:.JVZgiNA

No.35
意  味 :角(名詞)
原  文 :「牛頭〜次若」(『三国史記』)
漢 字 音:次若(中:ts‘yii-nyiak、朝:c‘∧-zyak)
再 構 音:?(李)
      tsunyak<*tunya(村)
比較(日):古代日本語「tuno1(角)」(村)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 これも原文不明。誰か補ってちょ。本例の場合、最大の問題は「牛頭」を「角」と
解釈することが許されるかどうかだろう。

76 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/20(金) 16:43 ID:.JVZgiNA

No.36
意  味 :翼(名詞)
原  文 :「於支谷一ニ云フ翼谷」(『三国史記』)
漢 字 音:於支(中:io-t∫ie、朝:∂-ci)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 日韓ともに対応語は指摘されていない。「支」は万葉仮名ではキ甲類音として
使用される漢字であり、上古音は「k-」系であったと推定されている。思うに、
これは「翼」の高句麗漢字音を反映したものではないだろうか。「翼」の漢字音は
「中:yyi∂k、朝:ik」であるから、「支」が「k-」であれば、そこから再構される語形
は「翼」の漢字音にかなり近づく。

77 名前:日語商売:2003/06/20(金) 18:44 ID:SWZjE0gM

>>74
辞書では「蹴る」の古形として「くう(kuw-u)」という見出し語を掲げているものも多いですが、
幽霊語の可能性もありますね。そもそもがこの動詞だけ下一段活用というのも変ですし、
中世以前には連用形「くゑ」でしか出てこない辺り、もともとは動詞ではなく、接頭語だった可能性も
考えられます。
『日本書紀』で一例、「毬打」を「マリクウル」と訓んでいる箇所があって、この「クウル」が
「くう」の連体形だという人もいますが、同じ箇所に「クユル」という訓もあって、
これもはっきりしません。
「蹴る」の起源については、「蹶」という字の音kiu∧t(クヱツ)から来たという説もあります。
(小松英雄『日本語はなぜ変化するか』1999、笠間書院、pp.189-191)
『日本書紀』で「蹶」を「くゑ」と訓んでいることから出てきた説ですが、『大漢和辞典』によると、
「蹶」の意味は「たおれる、つまづく」などが中心で、「ける」の意味はありませんから、
この説も甚だ疑問です。むしろ「蹶」と「くゑ」の音の類似から来た一種の和習でしょうか。
一方、「こゆ」あるいはその別形「くゆ」も、「くゑる」と「こゆ(る)」の混乱からできた
語形という説もあるものの、古い例で「ける」の意味で使われている語形であり、
はっきりした動詞としてはこちらの方が使われていたのではと思います。

高句麗語の「廻」との比較だと、どちらにより近いか判断しにくいのですが、語末にiがあるあたり、
「越ゆ」の方がいいような気もします。ただ語末のiは接尾辞であると考えれば、
*kwa〜*koのような形が語根としてあり、
  *kwa-i(*ko-i)>高句麗語「廻」、日本語「くゑ」
  *kwa-yu(*ko-yu)>日本語「こゆ」
  *kwa-u(*ko-u)>*ku-(w)u>日本語「*くう」
のような共通語形からの変化を考えることも可能かと思います。

78 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 01:08 ID:vW/sY.m.

>>77 日語商売さん

 日本語の「クウ(蹴)」「コユ(越)」問題は中々厄介でして、はっきり言って
高句麗語にかまっているどころじゃなかったりします(w。とりあえず参考
までに『時代別国語大辞典・上代編』から、「クウ(蹴)」の項の解説を引用
しておきます。

  梁塵秘抄には「馬の子や牛の子にくゑさせてん、ふみわらせてん」の
  ように古形を残しているが、名義抄では「滴※ クヱル」のほかに、
  「蹴 化ル、クユ、コユ」という形も見える。「天皇祈曰、朕将/v滅/2此
  賊/1、当/G蹶(くゑ/)ムニ/2茲石/1、譬如/2柏葉/1而騰/J、即蹶(くゑ/)
  タマフニ之、騰/v如/2柏葉/1、因曰/2蹶石野(クヱイシノ/)/1」(豊後風土記
  直入郡)の「蹶」はクヱとも訓まれるが、フムとも訓めることは次の地名
  説話との関係においてもいえる。「朕得/v滅/2土蜘蛛/1者、将/v蹶(フ/)
  マムニ/2茲石/1、如/2柏葉/1而挙焉、因蹶(フ/)ミタマフニ之、則如/v柏上/2
  於大虚/1、故号/2其石/1曰/2蹈石(ホムシ/)/1也」(景行紀一二年)。
  第三例の「打毬」の岩崎本の朱点傍訓はクウル(マリ)とあり、釈日本紀
  秘訓にはクユルと見える。名義抄や世尊寺本字鏡にあるように、蹴るの
  意味で、クユという語もあったらしいが、上代における存在は疑わしい。
  これと関係づけて考えるべきは、新撰字鏡の「[足+可] [足+巴][足+可]
  行皃、用力也、立走、又古江奈良不(コエナラフ)・滴※ 万理古由(マリ
  コユ)、又乎止留」、和名抄の「蹴鞠 末利古由(マリコユ)」、その他「脚
  ノ指ヲモチテ地ヲ蹴(コ)エテ足ヲ壊リツ」(小川本願経四分律甲本古点)
  「右ノ足ヲ以テ之ニ蹴(コ)ユルニ足復粘着ス」(石山寺本大智度論古点)
  や前掲の名義抄などに見えるコユという語である。これが果たして、いわ
  ゆるケルという意味を有する語であったか、あるいは、強く踏む・おどり
  上がるの意で、むしろ越ユと関係づけられる語であったかなどの点は
  問題であるが、アゴエという語が、これと足(ア)との複合語であったと
  すれば、この語の上代における存在を想定することもできよう。クユは、
  あるいは、クウが、このコユの類推によって変化して、生じた形かもしれ
  ないが、また一説には、クウという終止形はなく、古く蹴(ケ)ルは、クェ・
  クェ・クェル・クェル・クェレ・クェヨのように下一段活用したとの考えもある。

※「滴」の実際の字はさんずいをあしへんに変えたもの。

79 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 02:20 ID:vW/sY.m.

>>77 日語商売さん

 岩崎本日本書紀の朱点「クウル」と『釈日本紀』の秘訓「クユル」とどちらを
信用するかと言われれば、私としては当然、鎌倉後期の『釈日本紀』よりも、
日本書紀としては最古の訓点(平安中期)を存する岩崎本の方に軍配を
上げるでしょう。「蹶」については、「つまづく」という意味があるわけですから、
「けつまづく」から更に「ける」という意味へと拡大解釈された可能性はあるの
ではないでしょうか。「クウ(蹴)」と「コユ(越)」の関係について、以下私見を
述べれば、「クウ(蹴)」の連用形「クヱ」の第一音節の母音uと第二音節の
半母音wが同化した結果、[ku'e]という上代日本人の甚だ忌み嫌う母音連続
状態になってしまったため、それを忌避しようと間に半母音jを入れて[ku'je]
としたのがきっかけで、本来別語ではあるが意味的に関連する部分が大きい
「コユ(越)」の連用形[ko1'je]との間に更に発音上の接点まで生まれ、その
結果意味上のコンタミネーションが生じたのではないかと推測しています。
第一音節がクとコ甲で発音が違っていることについては、四段動詞の連体形
活用語尾はもとはオ列甲類音だったのが後にウ列音化して終止形と語形が
同じになったと推定されており、その背景としてウ列音とオ列甲類音が一時期
発音的に接近していたという事情があったとも言われていますので、そういう
ことも相俟って混乱が進んだのではないでしょうか。

80 名前:日語商売:2003/06/21(土) 03:53 ID:zPalenMk

>>78-79
ご教示ありがとうございます。
「クウ(蹴)」と「コユ(越)」の関係、おおむね同意します。
「クウ」については、それがあったという仮定の元での話ですが、類似の語形「ウウ(植・飢)」
「スウ(据)」の活用とか、「ウ→ヰル(居)」の活用形式の変化なども、
視野に入れて考えるべきかもしれませんね。
ことに「ウ(上二段)→ヰル(上一段)」の変化と「*クウ(下二段)→クヱル(下一段)」の変化
(とされるもの)は、形態上平行した変化のような気がするのです。
ここに挙げた「*クウ」「ウウ」「スウ」は、どれも二重母音?をパラダイムに含む、変な言い方ですが
「気持ち悪い」動詞であり、母音連続が原則現れない上代日本語で、それを解消しようとする
力が働くのは、ある意味当然のことでしょう。
なのに、それと考えられる変化は「*クウ」にしか起こっておらず、「ウエル」「スエル」の形が
現れるのは近世以降です。この非均整はどうすれば解釈できるのか?
1つには「*クウ」を幽霊語として抹消し、「クヱ」を副詞(連用形のみの欠格動詞?)あるいは接辞として
処理する方法が考えられますが、そうすると「クウル」の解釈が難しい。
私の意見としては、「ウ(居)」が(「ウ(得)」との衝突回避のため?)「ヰル」に変化したのを
一種のテンプレートとして、「ヰ、ウ→ヰル」:「クヱ、クウ→クヱル」の活用移行が起こったと
考えたいのですが、「ウウ」「スウ」になぜその変化が起こらなかったのか説明ができないのです。
類例のない下一段という活用がよほど嫌われたのか、あるいは「ウヱル」の形が「ヱル(彫)」と
似ているので変化が押しとどめられたのか、その程度のことしか考えられません。
またパラダイム内にやはり母音連続形が存在する「オユ(老)」「クユ(悔)」「ムクユ(報)」には
それを解消する変化が起こった形跡もないのも気掛かりです。まぁこちらは、上代以前に
「i:yi」の対立が存在して、これらの連体形が oyi, kuyi, mukuyi だったと仮定したり、
「カイ(櫂、これももともとは「カキ1」か?)」のような語の存在のせいでイについては母音連続も
許されぬことはなかったと考えればなんとか解釈できますが・・・。

81 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 13:26 ID:vW/sY.m.

>>80 日語商売さん

 動詞の活用形の中では連用形が最も多用されるものですので、連用形が
どういう状態にあったかというのが一番重要でしょう。「クウ(蹴)」の場合は、
たまたま連用形「クヱ」と非常に音形・意味の近い「コ江(越)」という存在が
あったため、発音や意味の混淆が進んだのだと解されますし、「ウ(居)」の
場合は、連用形が一音節の上二段動詞「フ(乾)」「フ(簸・嚔)」「ム(廻)」が
一斉に上一段化した一連の流れに乗って上一段化しただけのことのように
思われます。「ウウ(飢)」「ウウ(植)」「スウ(据)」は終止・連体・已然形を
見ると上代日本人の忌避する母音連続が生じていて確かにキモチワルイ
ですが、連用形はそれぞれ「ウヱ(飢)」「ウヱ(植)」「スヱ(据)」であって、
母音間には半母音とは言え一応子音wが入る格好ですから、何とか許容
出来たのでしょう。まぁそれでも、「ウヱ(飢)」などはしばしば語頭の母音
を落とした「ヱ(飢)」の形で現われたりしますから、やはり何気に気持ち
悪かったようですが(w。

 結局、これらの語と「クヱ(蹴)」との最大の違いは、似た語形の類義語
があるかどうかでしょう。「クヱ(蹴)」の場合は、たまたま発音が乱れた
時に、「コ江(越)」の存在がそれを保証してしまう格好になってしまった
ため、問題が固定化してしまったわけですが、「ウヱ(飢)」「ウヱ(植)」
「スヱ(据)」の場合はそういう存在が存在しません。その結果、一時的
に発音が乱れるというようなことはあっても、それが恒久化することは
なかったのだと解されます。

 ただ、そのように考えると、上二段動詞「オユ(老)」「クユ(悔)」「ムクユ
(報)」では連用形において「オイ」のようにあからさまに母音連続が発生
するにも関わらず、なぜそれが上代人には問題視されなかった(ように
見える)のかが大変気になります。お説のように、「i/ji」の対立が存在
したとか「カイ(櫂)」の存在から「イ」は例外的に許容されたとか言えば
まあ何とかなることはなりますが、正直苦しいですよね。この中では比較
的前者がましですからそれに与したいところですが、それを証明するのは
厄介ですしね。ともあれ、これについてはなお考えたいと思います。

82 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 13:43 ID:vW/sY.m.

>日語商売さん

 ところで、>>76はいかが思われます? 結構いい線いってると思うのですが(w。
ちなみに、『三国史記』には、新羅の地名ですが「単密県ハ本武冬弥知」というのが
ありまして、「弥知」を「密」で置き換えた例があります。この「弥知」が「密」の新羅
漢字音であれば類例ということになるので好都合なのですが、「密」の新羅漢字音
は通常「mil」とされているのでちょっと厳しいかも。ただ、新村出は「密」には「弥知」
の音もあったのかも知れないと考えていたようです。t入声に母音が付加されている
ところなんか、いかにも日本漢字音臭い処理なんですけどね。

83 名前:名無しさんはポシンタン:2003/06/21(土) 18:51 ID:74iRGDSE

古代高句麗語と古代日本語、ヘタすると日本語のほうが
古形を残しているように見えるものがいくつかあり…

だからどうだというのではないけど…いやあるか。
つまり、ますます「高句麗語が日本語の起源」という電波説が
成立しづらくなっているような気がする。
古代の高句麗語と日本語の段階で、すでに現代の英語とドイツ語
と同じぐらいの差違が存在していたことが確実っぽいというか。
ヨーロッパを引き合いに出すのは勘違いと妄想の元だと分かって
はいつつ。

84 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 18:54 ID:nnT49MHU

 それでは、社会生活語彙に参りま〜す。

No.37
意  味 :母(名詞)
原  文 :「母城郡一ニ云フ也次忽」(『三国史記』)
漢 字 音:也次(中:yyia-ts‘yii、朝:ya-c‘∧)
            ←巴派(中:pa-p‘ai、朝:p‘a-p‘ε)
再 構 音:?(李)
      papa(村)
比較(日):古代日本語「ΦaΦa(母)」(村)
比較(韓):後期中世語「∂mi(母・親)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 本文の文字を誤字と見るかどうかで日韓の対応が分かれる例。尤も、
仮に本文が「也次」のままで正しいとしても、朝鮮語の語形とは程遠く、
本例を朝鮮語の対応例とするのは納得し難い。もし誤字説が成り立つ
とすれば、日本語にとっては非常に有力な対応例になることは間違い
ないが、果たしてこれを認めてよいものかどうか、悩むところである。
「巴」は『三国史記』の地名表記として使用例を確認出来たが、「派」に
ついてはまだ確認が済んでいない。もし使用例がないとすると、誤字説
にはちょっとつらいことになりそうである。

85 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:02 ID:nnT49MHU

No.38
意  味 :子(名詞)
原  文 :「童子忽県一ニ云フ仇斯波衣」(『三国史記』)
漢 字 音:仇斯(中:gi∂u-syie、朝:ku-s∧)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「ko1(子)」(李)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 「忽」は「城」の意であるから「波衣(巌)」との対応は不審。宋敏の指摘の
ように、「忽」が山上に建てられた城塞の意であるならば、山という点で共通
するからということになるのだろうが、いかがなものか。


86 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:04 ID:nnT49MHU

No.39
意  味 :親戚(名詞)
原  文 :「有隣郡本高句麗ノ于尸郡」(『三国史記』)
漢 字 音:于尸(中:斤iu-∫ii、朝:u-si)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「ukara(族)」(娜)
比較(韓):後期中世語「ul(戚)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 再構音は示されていないが、おそらく「hul〜ul」だろうから、朝鮮語とよく
一致する例ということになる。ただ、古代日本語にも「ウカラ(族)」という語が
あり、「ヤカラ(族)」「ハラカラ(同胞)」「カラダ(体)」等の例から「ウカラ」は
「ウ」と「カラ(肉体)」とに分析出来るので、十分に本例と対比させることが
可能ではないかと考える。

87 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:13 ID:nnT49MHU

No.40
意  味 :隣人(名詞)
原  文 :「鄰豊県本高句麗ノ伊伐支県」(『三国史記』)
漢 字 音:伊伐支(中:ii-biu∧t-t∫ie、朝:i-p∂l-ci)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「ius(隣)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 李によれば、中期朝鮮語「ius(隣)」に対応し、「ius」は更に「ifщs」に遡る
のだという。まぁ確かによく似ていることは間違いないが、原文は「鄰豊県本
高句麗ノ伊伐支県」であり、「鄰」が「伊伐支」に対応するとすると、「豊」の字
が余ってしまうというのはちょっとまずいのではないか。

88 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:18 ID:nnT49MHU

No.41
意  味 :王(名詞)
原  文 :「遇王県本高句麗ノ皆伯県」「王逢県一ニ云フ皆伯」「王岐県一ニ云フ皆次丁」
      (『三国史記』)
漢 字 音:皆(中:k∧i、朝:k∧i)
再 構 音:kai(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「ki1mi1(君)」(娜)
比較(韓):新羅語「kan(干)」「han(翰)」(李)←ともに新羅の官名
比較(他):夫餘語「ka(加)」←夫餘の官名
      任那語「kanki(干岐)」←任那の王位
      蒙古語「kaγan(可汗)」←皇帝・君主
考  説 :
 中国文献で高句麗と夫餘が同族とされることからしても、高句麗語「kai(王)」と
夫餘語「ka」は間違いなく同源の語だろう。新羅語の官位「kan〜han」と任那の
「王」を意味する「干岐」もこれらと同源の語であると思われる。「kaγan(可汗)」
の称号は5世紀の初頭にモンゴル高原に建国した柔然が最初に用いたとされる
が、ほぼ同時期に鮮卑も使用していた証拠がある(嗄仙洞の銘文)。思うに、朝鮮
半島へは鮮卑の一部族・慕容氏あたりから伝えられたものではないだろうか。
それにしても、これだけアジア地域で人気のあった語でありながら、古代日本語に
それと明確に対応するものが見当たらないというのは面白いことである。さすがに
「ki1mi1(君)」では弱いし、古代日本語「kami2〜kamu(神)」を対応例として引っ
張ってくるというのもあんまりだろう。まぁ中央アジアのテングリ(天神)神話から
すれば、王は神の子であるから、王を意味する語が神という意味を持っていても
不思議ではないが。

89 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:29 ID:nnT49MHU

>>83

 いや、まだそう結論を出すのは早いかと。長い目で見てやって下さい。
      __
      iii■
   ─-(´∀`)-─
   |\@|_Y_|@/|
 .<\__(ωω)__/>

90 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/21(土) 19:36 ID:nnT49MHU

>>83

 とは申せ、現段階でも高句麗語と日本語・朝鮮語の違いは英語とドイツ語の違い
以上のものであったことぐらいはわかります罠。そこから先はまだ保留ということで。

91 名前:日語商売:2003/06/21(土) 21:49 ID:zPalenMk

>>81
やっぱり「コ1江」の存在が大きかったんですかね。うむむ。。。
あるいは上代既に「クウ」は「コ1ユ」と混淆が進んでいて、連用形以外の部分を「コ1ユ」に
任せてしまっていた、一種の混淆活用形を持っていたかもしれませんしね。
そういう状態になかった、むしろできなかった「ウウ」「スウ」はそのまま残ったと。
ヤ行上二段の場合は、これはもう、上で挙げた理由の他には、iが最も子音的だから許容度が上がったとか、
一般音声学的な知識を書いてお茶を濁すしか、今の段階ではないと思います。
もちろん、ヤ行上二段・ワ行下二段の活用形を持つ動詞が非常に少ないことは、ぎりぎり許容されるけど
できれば避けたい形であったことの裏返しですが・・・。

>>82
私は、>>76で示された可能性については、けっこうあるとは思いますが、
「於」は中古音で語頭子音と介音が影母3等(声門閉鎖音+i)、「翼」は喩母(半母音 y+i)であるのが
ちょっとだけ引っかかります。ただ中国語の微妙な音声の差異を高句麗語でどれだけ区別できたか、
どのように区別したかはわからないので、中国原音が違うと否定もできないです。
数年前に出土した飛鳥時代の字音を示した木簡のようなものが発見されれば、字音の状態を
少しは垣間見ることができるのですが、何しろ旧高句麗の領土は今やとんでもない土地になっていて、
調査どころか自由に観光することもできない状態ですからねぇw
それから漢字音を分析的に表記したとみられる例は、『日本書紀』の朝鮮固有名詞表記にも、
例があるそうです(今日行ってきた学会の予稿集に載っていた)。
例えば「発鬼」という地名を「弗知鬼」と表記した例とか。
朝鮮の固有名詞表記には独特の用字がみられたり、所謂「書紀区分論」があてはまらなかったりするので、
原資料の反映と見ることができそうなのですが、さてこれが朝鮮側の誰かが書いたものなのか、
それとも日本人(含む日本化した渡来人)が書いたのかとなると、よくわかりませんので、
「弥知」=「密」字音の傍証としては弱いです。
もうちょっといいかもと思われる例は、漢字音の体系的輸入以前に朝鮮系の語に入ったと思われる
借用語です。たとえば「筆」を中期朝鮮語でput(現代ではpus)と言いますが、
これは「筆」の借用語だと思われます。
半島の漢字音がt入声を一律lにする前には、tで写していた時代もあったかもと考えさせる語形です。

92 名前:日語商売:2003/06/22(日) 02:02 ID:94ZoRTPw

>>83
まぁ、そういうもんですw
比較言語学の考え方では、同系統と考えられる言語は、どちらが元ということはなく、
互いに兄弟のような関係というように考えますから。
特に高句麗語と上代日本語は、そういう関係にあったのではないかと思います。
もちろん別れてからの異質な要素(他言語との)の吸収によって、

まぁ、本当はもっと沢山高句麗語の側の語彙とかが沢山残っていたり、まとまった文章
(もちろん、何らかの方法で「高句麗語」で書かれている)があれば、文法的な部分まで
比較対象にできるのですが、残念ながら古代半島では在地語の文章と思しきものを残しているのは
新羅だけなのでありまして、比較の対象は十分とはいえません。
高句麗語のものとして掘り出している語彙も、地名の新旧が言ってみれば漢字の音と訓のような
関係みたいだからってだけであり、はたしてそれがどれほど正確なものかどうか
保証はあまりないのですよ。

本当はそこから音韻対応(双方の言語の間での音韻の1:1対応)を取り出せれば
大成果になるのですが、そこまでできるほど語彙がないってのが痛恨ですね。。。

93 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/22(日) 23:35 ID:L6gZvRHA

 ようやく半ばに達しました。引き続き、鉱物語彙に参りま〜す。

No.42
意  味 :玉(名詞)
原  文 :「玉馬県本高句麗ノ古斯馬県」(『三国史記』)
漢 字 音:古斯(中:ko-syie、朝:ko-s∧)
再 構 音:?(李)
      kusi(村)
比較(日):古代日本語「kusiro2(釧)」(村)
比較(韓):後期中世語「kusщl(玉)」(李・村)
比較(他):ナシ
考  説 :
 日韓ともによく一致する例である。古代日本語「クシロ(釧)」は手に巻く輪状の
装身具であり、厳密には「玉」と同じではないが、玉は装身具の材料として最も
ポピュラーな存在であるし、また「クシロ(釧)」の主な材料の一つでもあることから、
転義として認めてよいのではないか。それより、本例は高句麗語よりも日本語と
朝鮮語の語形の方がよく似ている点、注目されよう。高句麗語には語末のlなりr
なりの存在を窺わせるものはないが、日本語と朝鮮語にはr(l)が存在するから
である。場合によっては、高句麗語からまず新羅語に入り、その後日本語が借用
したという可能性も考慮する必要があるかも知れない。

94 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/22(日) 23:38 ID:L6gZvRHA

No.43
意  味 :金(名詞)
原  文 :「蓋蘇文或イハ云フ/2蓋金ト/1。姓ハ泉氏」(『三国史記』)
      「大臣伊梨柯須彌弑ス/2大王ヲ/1」(『日本書紀』)←伊梨柯須彌=泉蓋蘇文
漢 字 音:蘇文(中:so-miu∂n、朝:so-mun)
      須彌(中:syiu-myie)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「soi(金)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 漢字音からは再構語形は「somin〜somi」が妥当か。ただ、中期朝鮮語「soi」
が対応するということになると、再構語形としては「sobi」の方がよいかも知れない。
〔sobi→soβi→soi〕という変化を想定出来るからである。

95 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/22(日) 23:39 ID:L6gZvRHA

No.44
意  味 :銀(名詞)
原  文 :「銀尸城本折忽」「本銀城本召尸忽」(『三国史記』)
漢 字 音:折(中:t∫iεt、朝:sy∂l)
      召尸(中:t∫iεu-∫ii、朝:cyo-si)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 再構音としては「t∫iεr」が妥当か。日本語で強いて対応例を求めるなら、
「シロガネ(銀)」ということになるだろうが、さすがにこれはかなり厳しそうだ。

96 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/22(日) 23:40 ID:L6gZvRHA

No.45
意  味 :鉛(名詞)
原  文 :「鉛城本乃勿忽」(『三国史記』)
漢 字 音:乃勿(中:n∂i-miu∂t、朝:nε-mul)
再 構 音:nam∂r〜nami¨r(李)
      namul(村)
比較(日):古代日本語「namari(鉛)」(李・村)
比較(韓):前期中世語「namっr(鉛)」(李)
         ←「鉛俗ニ云フ/2那勿ト/1」(『郷薬救急方』)
      後期中世語:nap(鉛)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 日本語とよく一致する例として有名。朝鮮語も、13世紀の高麗文献には
対応する語彙が見えるが、後期中世語では別の語彙に取って代わられて
いる。結局は高句麗系渤海語から一時的に受け入れた外来語だったのだ
ろう。ただ後期中世語の「nap(鉛)」も第一音節は一致するから、先祖を
辿れば高句麗語と同系の語彙だった可能性はあると思う。

97 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/22(日) 23:42 ID:L6gZvRHA

No.46
意  味 :鉄(名詞)
原  文 :「鉄円県一ニ云フ毛乙冬非」(『三国史記』)
漢 字 音:毛乙(中:mau-iet、朝:mo-щl)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「maro2(丸)」(娜)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 本例は李説に従ってここに置いたが、村山は「鉄円郡」と「毛乙冬非」の
関係を「鉄=毛乙」「円=冬非」ではなく、「円」=毛乙」「鉄=冬非」と解して
いる。「円」が「丸い」という意味の形容詞であれば、名詞の前に来るのが
自然だし、本例が「鉄」の意の名詞であるとしたところで諸言語に対応例は
一つも見当たらないわけであるから、その可能性はかなり高そうである。
No.72「円」参照。

98 名前:日語商売:2003/06/23(月) 14:31 ID:pJDA67oA

帰国前日の深夜からネットが落ちて、当日朝まで復活せず、実家に戻ってネット環境復活したのが
今日昼だったので、レスが遅くなっております。ご容赦を。

>>84
これは非常に問題あると思いますね。
だいたい世界の著名な言語では、どういうわけか、母親を表す言葉はmを含むことが多く、
英語のmotherから中国語の [女馬][女馬] や「母」、韓国語の eomeoni(オモニ)、
上代日本語の「おも(母)」までそうなっています。
そのなかで、他の言語ではどちらかといえば「父」を表す語形として現れそうな
papaが、日本語では上代から現在まで最も中心的な「母」を示す言葉になっています。
これと類似の語形が高句麗語で発見されれば、比較の素材として非常に興味深いのですがねぇ。

しかし、誤字説の方は、日本語の形にあまりに引き付け過ぎてやいないかと思われます。
むしろそのままの形を日本語の「おや」と比べたくなるような・・・思いつきですが。

>>85
この原文のもっと長いバージョンが、>>91で参考にしたのとは別な発表のレジュメの中にありました。
(内容はちょっとデムパで、質問者も苦笑してたのだけど、まぁ紹介するほどのものでもないですw)

「童子忽県(一云仇斯波衣)童城県、本高句麗童子忽(一云幢山県)県」

これを見ると「童子忽=仇斯波衣=童城=幢山」の関係(?)が成り立ちそうですね。
「仇斯」が「童子」「童」に当たるとみることができると思います。
最後の「幢山県」の例が気になりますが、「童」は中古音duη、「幢」はd^っη
(私見ではdrawη、drは巻舌音のd)で、母音がかなり違うものの、字画は類似しているし、
中古音以前はもっと似たような音だったらしいので、まぁ変異の範囲と言えそうです。

99 名前:日語商売:2003/06/23(月) 14:45 ID:pJDA67oA

>>94
今の韓国語では「soi(発音はswe)」は、鉄あるいは金属一般を表す語ですね。
この語も、日本語の「かね」のように、総称としての意味を持っていたんでしょうか?
sobiだとすれば、日本語では「さひ1(鋤)」も候補に入れたい気がします。
ただ第一母音や第二子音が対応例として有効なのかどうか疑問ですが。



100 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/23(月) 16:43 ID:iIgac0mM

>日語商売さん
>>98

 「也次忽」ですが、村山七郎氏が『三国史記』の資料として使用した京城の
古典刊行会影印では、「次」の字はにすいの「派」になっていたようです。

 「オヤ(親)」というのは思いつきませんでした。『時代別』によれば、上代
日本語では「オヤ」は特に母親を指すことが多いとありますから、そうだと
すれば悪くないかもですね。尤も、そのためには日本語の第一音節の「オ」
と高句麗語の「次」をどうにかして処理する必要がありますが。

>>99

 アイゴー! 李基文の論文では「金」「銀」と並んでいたから、ウリはすっかり
「gold」という意味かと思い込んでいたニダ! あわてて『李朝語辞典』を
引いたら、「鉄」が最初に登場し、その後で「金」や「金気」という漢字が出て
いるニダ! 紛らわしい書き方をした李基文には謝罪(ry

 それはともかく、古代日本語「サヒ(刀・鋤)」も一応候補には入りそうですね。
Φもbもともに唇音ですし、日本語も古くは朝鮮語のように語頭:無声子音/
語中:有声子音という相補分布をなしていた可能性が高いので、「サヒ」も
音声的には[saβi]に近い発音だったと思われますしね。

101 名前:鄭聲之:2003/06/23(月) 20:44 ID:08aiToHA

100まで来ましたね。
いつもこの擦れ楽しみにしています!

102 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/24(火) 00:26 ID:Hy3hsGEE

>>101 鄭聲之 さん

 おお、鄭聲之さんではないですか。宜しければ鄭聲之さんもご参加下さい。
過去レスを見れば明らかなように、その道の専門家が唱えている説と言っても、
説結構思いつきレベルのものがありますからねぇ。今の段階はそういうレベル
のものでも歓迎ですので、気が付いたことがあったらどしどし指摘して頂けると
助かります。

103 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/24(火) 00:32 ID:Hy3hsGEE

引き続き、器物語彙に参りま〜す。

No.47
意  味 :犂(名詞)
原  文 :「犂山城本加尸達忽」(『三国史記』)
漢 字 音:加尸(中:ka-∫ii、朝:ka-si)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「karε(木[木+欠]・鍬)」(李)
比較(他):満州語「halhan〜halgan(犂[金+華])」
考  説 :
 再構語形は「kar」だろうから、確かに中期朝鮮語とはよく一致する。
日本語で挙げるとしたら「クハ(鍬)」ぐらいだろうが、さすがにこれは
無理だろう。

104 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/24(火) 00:36 ID:Hy3hsGEE

No.48
意  味 :斧(名詞)
原  文 :「於斯内県一ニ云フ斧壌」(『三国史記』)
漢 字 音:於斯(中:io-syie、朝:∂-s∧)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):古代日本語「wono2(斧)」(娜)
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 日韓ともに対応例は指摘されていない。日本語で強いて挙げれば「ヲノ(斧)」
ということになるだろうが、第一音節以外は似ておらず、対応例とするにはやや
弱い感あり。

105 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/24(火) 01:09 ID:Hy3hsGEE

No.49
意  味 :冠(名詞)
原  文 :「其ノ冠ヲ曰フ/2骨蘇ト/1」(『周書』)
      「其ノ冠ヲ曰フ/2蘇骨ト/1」(『北史』)
漢 字 音:骨蘇(中:ku∂t-so、朝:kol-so)
      蘇骨(中:so-ku∂t、朝:so-kol)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):ナシ
考  説 :
 李は「互いに倒置された」と説明しているが、どちらか一方が誤っている可能性も
勿論あるだろうと思う。本例の対応語は知られていないが、「コジ(巾子)」などは
どうだろうか。「コジ(巾子)」は冠の部分の名で、冠の頂上後部に高く突き出ている
部分である。神楽歌に用例が見えるから、上代にも使われていた言葉である可能
性が高い。元々漢語であるから、高句麗でも使われていたことは十分考えられる。
「巾子」が高句麗語に取り入れられた後、もはや元の漢字表記を思い浮かべられ
ないほど語形変化を起こしていたので、「骨蘇」と漢字表記されたとは考えられない
だろうか。

106 名前:鄭聲之:2003/06/24(火) 16:31 ID:FMqIcQkc

>>102
つっこみ(つーか思いつきの対案や軽い質問)はたくさんあるのですが
言語学の専門家でないので、トンデモ説・電波説になっていても自己診断できないのです。
で、恥ずかしいからというのがひとつ。
それに娜々志娑无さんは素人の初歩的な誤りにも詳細に解説してくださるので、
スレの流れを邪魔してしまうのではないかと虞れるのがひとつ。
それで静観しておりました。

>その道の専門家が唱えている説と言っても、 結構思いつきレベルのものがありますからねぇ。
>今の段階はそういうレベル のものでも歓迎ですので、気が付いたことがあったらどしどし指摘

そうまでいってくださるんでしたら、こっちの流れを邪魔しないように
「教えてくんスレ」で時々つっこみ入れましょう。

107 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/24(火) 23:13 ID:WQWPsIwc

>>106 鄭聲之さん

 いやいや、やっぱりそういうことは専門スレに集中させた方が、ROMっている方
(ほかにどれだけおられるのか疑問ですが)にとっても、また、今後このスレを資料
スレとして利用するかも知れない人にとっても、何かと都合が宜しいのではないで
しょうか。それに、あちらのスレは言わば初心者スレ。スレの主旨を考えれば板違い
と言われても仕方がないように思います。まぁぶっちゃけて本音を言えば、高句麗語
の貼り付けはあと30と少しで終わってしまいますし、その後はこのスレそのものが
過疎スレと化してしまう恐れが多分にありますので、スレ主としましては、スレを
少しでも多く伸ばしたいという気持ちでいっぱいなわけですが(藁。

108 名前:日語商売(休業中):2003/06/25(水) 18:33 ID:QcPwLOj6

こっちに戻ってきて、本棚の中で大野晋『日本語はいかにして成立したか』(中公文庫、2002)を
引っくり返していたら、>>16の「波兮・波衣([山見])」と対応する語として
方言にみられる「ハケ・ハゲ」を挙げていました。
この語の意味は地方によって違いますが「山の地面の露出したところ」「山の崩れたところ」「崖」
などです。

実はこの語があることは気付いていましたが(当方の故郷では「バッケ」と言い、崖のこと)、
[山見]と意味が対応するのかどうか不安で挙げていませんでした。
で、改めて『広韻』で[山見]の意味を調べると、「峻嶺(険しい山・峰)」とありました。
これならば、「巌」や「ハケ・ハゲ」と意味もよく対応しそうです。
その他に意味が対応しそうな語では、高知の方で海中の大きな岩礁のことを「ハエ」と言いますが、
これなんかは「ハケ・ハゲ」の類語と見ることができそうな気もします。

109 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/25(水) 19:24 ID:UriPM2l2

>>108 日語商売さん

 大野晋がNo.06「岩山」と「ガケ(崖)」とを対応させていたとは知りませんでした。
ただ、文献で見る限り、語頭が濁音になったのは近世以降のようで、中世までは
「kake」と清音だったわけですし、方言形に現われる「hake」「bake」も、ハ行音
が唇音系Φから喉音系hに変化した江戸中期以降に、発音上の類似から〔k→h〕
という音変化を起こしたと見るべきでしょう。あと、「ハゲヤマ(禿山)」からの連想
ということも関係した可能性は高そうです。語源的にも『日国大・第二版』の語誌
にあるように「カケヂ(懸路)」「カケミチ(懸道)」の「カケ」が独立したものというのが
妥当であると思われますから、本例に対応させるのはかなり厳しいかと。

 カケがなぜガケと語頭濁音化したかはまた別の問題ですが、ハケの方もバケ
と濁音化していることから見て、それには相応の必然性があったのでしょう。
濁音は清音に比べて強いとか荒々しいという音感があるとされます。おそらくは
その音感が「崖」というゴツゴツした岩場のイメージとよくマッチしたためではない
でしょうか。

 それから、方言の「ハエ(暗礁)」も確かに興味深いですが、こちらも語源は
おそらく「生え」でしょう。岩礁が突き出ているさまを植物が生えているさまに
例えたものと解されます。長崎方言や大分方言では陸地から海中に突き出た
岩礁という意味で使われているようですし、大島方言では溶岩の根という意味
だそうです。いずれも植物からの連想っぽく感じます。

>『広韻』で[山見]の意味を調べると、「峻嶺(険しい山・峰)」とありました。

 げ。『学研漢和大字典』では[山+見]は「山の頂上が平らなさま」とありました
から、そっちをすっかり信用しておりました。何てこったい。

110 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:15 ID:CcB9a3C6

 いよいよ、数詞の出番でつ。

No.50
意  味 :3(名詞)
原  文 :「三[山+見]県一ニ云フ密波兮」(『三国史記』)
      参考「玄驍県本推良火県一云三良火」(『三国史記』)
漢 字 音:密(中:miet、朝:mil)
再 構 音:mir(李)
      mit〜mir〜mi(村)
比較(日):古代日本語「mi(3)」(李・村)
比較(韓):ナシ
比較(他):古代トルコ語「bis(5)」
考  説 :
 日本語「ミ(3)」とよく対応する。参考として挙げた「玄驍県本推良火県
一云三良火」は旧弁韓の地名(今のプサンとテグの中間地点あたり)。
「推」は新羅語の訓読字では「mir-」と読める字なので、高句麗語や
古代日本語の数詞「3」とよく一致するということになる。弁韓においても
高句麗語と同系の言語が話されていた可能性を強く示唆する例であり、
日本語と高句麗語の地理上の距離をわずかに縮めてくれる。

111 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:18 ID:CcB9a3C6

No.51
意  味 :5(名詞)
原  文 :「五谷県一ニ云フ弓次云忽」(『三国史記』)
漢 字 音:于次(中:斤iu-ts‘yii、朝:u-c‘∧)
再 構 音:u¨c(李)
      utsu<*utu(村)
比較(日):古代日本語「itu(5)」(李・村)
比較(韓):ナシ
比較(他):古代トルコ語:u¨c(3)
考  説 :
 原文は李によったが、村山によると原文は「五谷郡一云弓次云忽」と
なっており、不審。「県」と「郡」、どちらが正しいのやら。本例は他の
箇所にも文字の誤りがあるらしく、李によれば、「弓次」は誤刻であり、
『世宗実録地理誌』には「于次」とあるといい、また村山によれば、「云」
もまた「呑」の誤りであり、『輿地勝覧』や『文献備考註』に「于次呑忽」と
見えているという。「県」「郡」の違いはしばらく措くとしても、「弓次云」が
「于次呑」の誤記乃至誤伝という可能性は大いにありそうである。他の
数詞同様、日本語とよく一致している。

112 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:19 ID:CcB9a3C6

No.52
意  味 :7(名詞)
原  文 :「七重県一ニ云フ難隠別」(『三国史記』)
漢 字 音:難隠(中:nan-i∂n、朝:nan-щn)
再 構 音:nan∂n〜nani¨n(李)
      nanun<*nanan(村)
比較(日):古代日本語「nana(7)」(李・村)
比較(韓):ナシ
比較(他):ツングース諸語「nadan(7)」
考  説 :
 本例は日本語とよく一致するだけでなく、ツングース諸語ともよく一致して
いる。三者の関係を髣髴とさせる例である。

113 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:25 ID:CcB9a3C6

No.53
意  味 :10(名詞)
原  文 :「十谷県一ニ云フ徳頓忽」(『三国史記』)
漢 字 音:徳(中:t∂k、朝:t∂k)
再 構 音:t∂k<*t∂w∂k(李)
      tek〜te(村)
比較(日):古代日本語「to2wo(10)」(李・村)
比較(韓):ナシ
比較(他):古代トルコ語「toquz(9)」
考  説 :
 日本語との一致は第一音節に留まるが、他の数詞における一致状況を
見れば、本例も対応例として十分の資格があると言えよう。そう言えば、
日本の金石文資料における借音表記や万葉仮名において「獲(斤uεk)」
「和(斤ua)」のような喉音系声母を持つ漢字と日本語のワ行音が対応して
いる例があるが、或いはこれは原始日本語のワ行音が「斤u-」に近い音で
あったことを示すものかも知れない。もしそうであれば、「トヲ(10)」も本来
は「to2斤uo2」に近い発音であった可能性も出てくるわけで、高句麗語との
類似も一層増すことになる。

114 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:27 ID:CcB9a3C6

 その他、分類に納まり切らなかった名詞の類です。

No.54
意  味 :善射(名詞)※「弓の名手」くらいの意味?
原  文 :「其ノ俗言ニ朱蒙者善射也トイフ」(『三国志』魏志東夷伝高句麗条)
      「夫餘ノ俗語ニ善射ヲ謂フ/2朱蒙ト/1」(『三国史記』)
漢 字 音:朱蒙(中:t∫iu-muη、朝:cyu-moη)
再 構 音:?(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):ナシ
比較(他):蒙古語:maηga(善射)
考  説 :特になし

115 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:31 ID:CcB9a3C6

No.55
意  味 :文(名詞)
原  文 :「文[山+見]県一ニ云フ斤乙波兮」(『三国史記』)
漢 字 音:斤乙(中:ki∂n-iet、朝:kщn-щl)
再 構 音:ki¨nr(李)
      ?(村)
比較(日):ナシ
比較(韓):後期中世語「kщl(文)」(李)
比較(他):満州語:hergen(文)
考  説 :
 朝鮮語とよく一致する例である。日本語から強いて候補を挙げるなら
「コト(言)」だろうが、さすがにちょっと厳しいか。

116 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 00:34 ID:CcB9a3C6

No.56
意  味 :重(名詞)
原  文 :「七重県一ニ云フ難隠別」(『三国史記』)
漢 字 音:別(中:biεt、朝:py∂l)
再 構 音:pj∂l(李)
      pe(村)
比較(日):古代日本語「Φe1(重)」(李・村)
比較(韓):後期中世語「p∧l(重)」(李)
比較(他):ナシ
考  説 :
 助数詞なのだから名詞ではなくむしろ接尾語とすべきところ。
日韓ともによく一致しているが、語末の「l」を保存している分、
朝鮮語の方にやや分があると言えよう。

117 名前:名無しさんはポシンタン:2003/06/26(木) 01:24 ID:kYX9FWbM

日本語の起源は古代の琉球語だと思います。
南方縄文人の言語が日本語の祖語の可能性が高いのだから、
北方の高句麗語が日本語に似ていたとしても、
高句麗語の起源が日本語(古代琉球語)とは言えても、
日本語の起源が高句麗語だとは絶対に言えません。


118 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 02:13 ID:CcB9a3C6

>>117

 まあまあ。ちょっと落ち着いて下さい。別に我々はこのスレで日本語の起源は
高句麗語であ〜る!なんてのは勿論のこと、高句麗語の起源は日本語である
などということを立証しようとしているわけではありませんよ。そもそも高句麗語
と古代日本語はほぼ同時期に並存していた言語なのですから、そんなことは
絶対あり得ないことです罠。

 我々が可能性ありとしてこのスレで追究しているのは、高句麗語と日本語が
共通の先祖を持っていたかも知れないという可能性のみです。そのためには、
まずは高句麗語という言語が一体どのような言語だったのかということを知る
ことが先決ですから、古代文献から高句麗語の断片的資料を蒐集して、古代
日本語や新羅語、中期朝鮮語などと比較して行きながら、高句麗語の実態を
一つ一つ明らかにしているところです。

 その結果、高句麗語はもしかすると日本語に近い言語という結論に達する
かも知れませんし、いや、朝鮮語の方がむしろ近いということになるかも知れ
ません。また、結局どっちとも言えないということになる可能性だって十分ある
わけです。あなたがどういう立場の方かは存じませんが、こんな状態で一体
何をあせる必要がありましょうか(反語)。

 とにかく、ろくに調べようともせず、ただ先入観だけで安易に決め付けようと
する行為はとても科学的なものとは言えませんね。せめて我々ぐらいは、
半島のニダビトの皆さん達を他山の石として、公正で科学的な態度を取りたい
ものです。

119 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/26(木) 02:19 ID:CcB9a3C6

 と、>>118を書き込んで、>>117がただのマルチポストのコピペだという
ことに気がつきました。_| ̄|o 欝…。

日本語の起源は高句麗語です。
http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/history/1052579071/l50" target=new>http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/history/1052579071/l50

縄文語って
http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/gengo/1046185555/l50" target=new>http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/gengo/1046185555/l50

120 名前:日語商売(休業中):2003/06/26(木) 08:51 ID:gNqqtN4U

>>119
ソンセンニム粋絽!!


121 名前:名無しさんはポシンタン:2003/06/26(木) 10:43 ID:4PgNYH.Y

楽しみに読んでます。
居来露!

高句麗、日本、ツングースに共通の祖語が有ったと仮定するとどういう可能性が
出てくるのでしょう?
原日本人が北方起源だとしても、日本の文化は南方起源の影響が色濃いと聞き
ます。南方から列島を通って半島から満州へ行った人達がいたのか?

122 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/28(土) 04:00 ID:b3cAmJ/A

>>121

 正直、ツングースまで含まれるかどうかは怪しい気がしますが、高句麗語と
日本語との間に共通祖語があったとすれば、両者はどこかで分かれたと
見なくてはなりません。その場所は朝鮮半島南部かも知れませんし、中国
南部かも知れませんし、もしかすると日本列島かも知れませんが、とにかく
両者が分かれる以前にどこか南方にいたことがあるというようなことを想定
する必要が出てくるでしょうね。ま、その辺の話はすべての単語が出揃って
からぼちぼち考えるということで。

123 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/28(土) 12:37 ID:b3cAmJ/A

 高句麗語関係を調べていて最近知ったのですが、『三国史記』巻に
以下のような記述があるそうです。

  三陟郡ハ本悉直国(巻35)

この悉直国というのは今の江原道南部の三陟にあった小国ですが、
景徳王の時に「三陟」という名に改められたわけです。旧名の「悉直」
と新名の「三陟」を比較してみると、「直」は中古音「d^i∂k」、「陟」は
中古音「t^i∂k」であり、両者には声母の有声〜無声という違いしか
ありませんので、陟→直は発音の近い良字に改めたのだという風に
解釈出来ます。このように「陟」と「直」が対応する以上、残った「悉」
と「三」も対応すると考えるのが自然です。ところが、「悉」は中古音
「syiet」であるのに対し、「三」は中古音「sam」であり、発音が対応
しないのです。そこで考えられることとしては、「三」は音読ではなく
訓読字なのではないかという可能性ですが、>>110で示したように、
高句麗語の数詞「3」は「mil」という語形であり、全然異なります。
ところが、ここで朝鮮語の数詞「3」を見てみると、前期中世語(高麗
語)は「sei」、後期中世語「s∂i(h)」、現代朝鮮語「se:s」ですから、
「悉」の漢字音「syiet」とよく似ているんですね。要するに、上記の
「三」と「悉」の対応は朝鮮語系の数詞「3」を持ってくることで説明
することが可能だというわけです。時代的に見て新羅語の反映と
見てよいでしょうから、ここに新羅語の数詞として新たに「3(siet)」
が加わり、同時に高句麗語との相違点も一つ増えることになります。

 なお、以上のことは金沢庄三郎が初めて指摘し、河野六郎や
韓国の朴炳采といった研究者も支持している事実だそうです。
それにも関わらず、どうして李基文がこれを取らず新羅語の数詞
「3」を不明のままとしたのか不思議でしかたがありません。私の
見る限り、上の説明は至極妥当なものであると思うのですが。

124 名前:娜々志娑无 ◆NcNEDmUA:2003/06/28(土) 13:16 ID:b3cAmJ/A

 よって、例の数詞対応表も以下のようになります。

  古代日本語 高句麗語 新羅語 高麗語 中期朝鮮語 現代朝鮮語

1   Φito2    −−  hっtっn hっtっn   hΛnah    hana
                 (一等)  (河屯)
2   Φuta    −−  tu¨pっ¨l tuβっr   tulh      tu:l
                 (二尸)  (途孛)
3    mi1     mil    siet    sei     s∂ih    se:s
            (密)    (悉)    (洒)
4    'jo2     −−   −−   nei     n∂ih    ne:s
                       (廼)
5    'itu     'utu   −−   ta∫us   tasΛs    tasっs
           (于次)        (打戍)
6    mu    −−   −−  'jul∫us  'jっsΛs    'jっsっs
                       (逸戍)
7   nana    nanun  −−  'ilkup    nilgub    'ilgob
            (難隠)        (一急)
8    'ja     −−   −−  'jultap   'jっdщlp    'jっdっl
                       (逸答)
9   ko2ko2no2 −−   −−  'ahop    'ahob    'ahob
                       (鴉好)
10   to2'wo    t∂k   −−   'jっl     'jっlh     'jっ:l
            (徳)         (噎)

 なお、表を書き改めるにあたり、ついでに一部の再構語形や音声表記
を一部改めました。古代日本語のハ行音はpからΦに変更し、イ列甲類
音はi1、オ列乙類音はo2としました。また朝鮮語関係は終声のrをlに統一
してあります。 また、新羅語「3」の再構語形は河野六郎によりましたが、
金沢庄三郎は「sa¨it」、朴炳采は「sit」と再構しているようです。個人的
には新羅語がtで終わるのは解せないので、「sie」ないし「siel」のような
語形だったと考えたいところなのですが。

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